第93回選抜高校野球 東海大甲府、力尽く 八回同点打、延長で涙 /山梨
<センバツ高校野球> 第93回選抜高校野球大会第2日の20日、東海大甲府は初戦で東海大相模(神奈川)に1―3で惜敗した。昨秋の関東大会と同じ「東海大対決」となったが、同点で迎えた延長十一回に突き放された。ただ、先発の若山恵斗投手(3年)が最後まで気迫のこもった投球を見せたほか、八回に久井竣也選手(同)が同点に追いつく適時打を放つなど粘り強さを見せた。三塁側アルプススタンドからは「ナイスプレー」と選手たちをねぎらう言葉とともに、健闘をたたえる惜しみない拍手が送られた。【金子昇太、後藤奈緒、南迫弘理、中山敦貴】 東海大甲府は初戦の相手が決まった直後から東海大相模のエース・石田隼都投手(同)を想定した打撃練習を繰り返してきた。しかし、この日先発マウンドに登ったのは石川永稀投手(同)。選手たちは意表を突かれた上、石川投手の140キロを超える速球に苦戦を強いられ、七回までわずか3安打に抑えられた。3番の木下凌佑選手(同)は「先発を知り、少し動揺した。直球を打ち崩せなかった」と悔やんだ。 七回には捕逸で先制点を許した。しかし、直後の八回にようやく打線が目覚める。「初球から思い切り振ろう」と打席に入った猪ノ口絢太選手(2年)が1球目をセンター前に運んだ。さらに内野安打などで1死二、三塁と好機が広がり、4番の久井選手の左前適時打で試合を振り出しに戻した。スタンドで試合を見守った父孝也さん(47)は「夢の舞台でヒットを打てて良かった」と笑顔で話した。 試合は1―1のまま延長戦へ。しかし、九回から登板した相模の石田投手に打線は沈黙した。逆に十一回に相模に3長短打を浴びて、勝ち越された。最終回に三振に打ち取られた久井選手は「秋に対戦した時よりも(石田投手が)レベルアップしていた。そのレベルについていけなかった」と話した。 先発の若山投手は六回まで散発3安打に抑えたほか、再三ピンチを切り抜け、最後まで気迫のこもった投球を見せた。父剛さん(48)は「手に汗握る東海対決だった。1人で投げ抜き、よく頑張った」とねぎらった。 スタンドには生徒や保護者、学校関係者約800人が駆け付け、選手たちを応援した。 ◇キレあるダンスで応援 ○…三塁側スタンドには昨春創部したばかりのチアダンス部の10人が駆けつけた。一塁側に3倍近い東海大相模のチアリーダーが見える中、部長の臼井柚葉さん(17)は「負けないように頑張る」と闘志を燃やし、吹奏楽部が事前録音した音源に合わせ、キレのあるダンスを披露した。初戦突破はならなかったが、顧問の小山ひかりさん(26)は「球児の夢舞台に花を添えられた」と、最後まで笑顔で応援した部員たちをねぎらった。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇「攻めの気持ち」貫いた 東海大甲府・若山恵斗投手(3年) 初めての甲子園は延長にもつれ込む接戦となり、最後は甘く入った球を痛打された。試合が終わると涙を流し、「ふがいない結果に終わり、本当に悔しい」と話した。 139キロの直球にスライダーなどの変化球を織り交ぜる緩急をつけた投球や制球力の高さが持ち味で、村中秀人監督は「球筋が良く、打者はタイミングを取りづらい」と評価する。食事の時間を惜しんで投げ込む根っからの「練習の虫」で、「チームを勝たせる投球がしたい」と口癖のように語る。 「攻めの気持ちしかなかった」と振り返る東海大相模戦は、相手打者の狙いを読みながら女房役の三浦諒太主将(3年)と配球を組み立てた。しかし、延長十一回に連打を浴び、勝ち越された。 この試合で走者を背負った際の投球や投球テンポに成長を感じたが、夏に向け「制球力と球の質にこだわっていきたい。チームとしては終盤の集中力などを見つめ直したい」と語った。【金子昇太】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦 東海大相模 00000010002=3 00000001000=1 東海大甲府 (延長十一回)