中日・松山の大記録…デビュー後89イニング2/3のべ360人に『被弾ゼロ』ドラフト制後最長だった松井裕樹を大幅更新
◇渋谷真『数字は語る~2024年竜戦士』その9 育成ドラフトでの入団から2年目で、早くも最優秀中継ぎのタイトルを獲得。松山晋也のサクセスストーリーは天井知らずだが、今季は大記録を打ち立てていた。デビューから通算89イニング2/3、のべ360人にいまだ被弾ゼロ。ドラフト施行後の最長だった松井裕樹(楽天、2014年)の71イニング1/3を大幅に更新した。 ◆中日・マルティネス、松山晋也のタオルを持って応援【写真】 さらにさかのぼると、米田哲也(阪急、1956年)に68年ぶりに並んだ。これが2リーグ分立後の最長かどうかは確認できなかったが、米田といえば驚異的なスタミナから「ガソリンタンク」という異名を取り、歴代2位の通算350勝。そんな昭和の大投手の記録に並び、来季の初アウトで抜く。その数字を「素直に光栄なこと」と喜んだ松山は、被弾しないことをこう分析した。 「何ででしょう。自分で思い付くのはデータを見て、判断してやっている結果なのかなと」 松山はマウンドでは気迫を前面に出すスタイルだが、実は投球理論に精通しており、データを重んじる。セットアッパーなので登板時の打順が分からないため、試合前に相手の主要打者の特徴を全て頭に入れる。必須項目はスイングスピード、カウント別のスイング率、コース別の打球速度。知りたいのは「いつ振ってくるのか」と「要注意のコース」である。 「(味方の)先発が投げているのを見て、データの確認と修正をすることもあります。でも、打球速度が出ないコースって多くの打者が出るコースのすぐ近くなんです。だから、データを頭に入れていても、自分に投げきる技術がないと意味がない」 安全の隣に危険が潜む。それを松山は「リアルだけどゲームの感覚。青(打者の弱点)に投げ込め!なんです」と説明してくれた。ちなみに、NPBには通算200セーブが10人、150ホールドが13人。重なっている3人を除いた20人の歴代名リリーバーは、全員がデビューイヤーに被弾している。89イニング2/3。松山の被弾回避能力がいかに抜きんでているかを、この数字は語ってくれる。
中日スポーツ