「野生のヤマメを守りたい」放流だけに頼らない自然増殖を目指して川底を掘り起こし「人工産卵場」を作る取り組み【宮崎発】
宮崎県美郷町の上小丸川漁協が、野生のヤマメの繁殖を目指し、人工産卵場を設ける取り組みを行っている。土砂の流入により産卵場所が減少する中、自然繁殖を促進する環境づくりが進行中だ。 【画像】この地域の川を管理する上小丸川漁協が野生のヤマメの増殖を目指し、産卵場を作った。各地から講師やボランティア18人が参加した。
ヤマメが産卵しやすい環境づくり
秋の訪れを感じる美郷町南郷鬼神野地区。ヤマメの産卵時期は秋。この地域の川を管理する上小丸川漁協が野生のヤマメの増殖を目指し、産卵場を作った。上小丸川漁協としては初めての取り組みで、各地から講師やボランティア18人が参加した。 土砂が川に流入するなど自然環境の変化によって川底が岩や土砂で覆われ、産卵に適した小石のある環境が減少している。このため、ヤマメの産卵に適した場所が、年々少なくなくなっているのが現状だ。 人工産卵場の設営は、まず河底を掘る事からはじまる。手作業で川底の岩や土砂を取り除き、石を大きさ別に選別。そこに2層の石を撒いて、最後に、ヤマメでも掘れる小さな砂利を撒き、一番上に敷き詰める。 作業前には大きな石しかなかった場所が、作業後は、メスのヤマメが産卵しやすい小さな砂利が敷かれた場所に変わった。放流に頼らずに、その川の野生のヤマメ自然繁殖を促す事につながるという。 水産機構研究員 山下耕憲さん: かなり良い人工産卵場ができたと思う。今後の産卵に期待している。「放流」一辺倒ではなくて、その場所に適した増殖手法。例えば野生の魚がたくさんいる場所では人工産卵場の造成等を積極的に行っていっていただきたい。 上小丸川漁協副組合長 長友智紀さん: 思ったより小さな産卵場でも作るのに時間と手間が掛かって、思いのほか大変だった。来年、再来年と継続して釣り人のボランティアを増やして、たくさん産卵場を作れるようになればいいと思う。 2024年は台風や大雨の影響で産卵場作りが予定よりも遅れてしまったという。また産卵場は作って終わりではなく、落ち葉や枯葉などを取り除くメンテナンスも必要で、息の長い取り組みが必要だ。