【児童精神科医が解説】「どうせ自分はバカでダメだから…」親が気付けない、キレやすい子が抱える“悩みの奥底”
知的障害と平均域のボーダーである知能指数(IQ)「70以上85未満」は「境界知能」と言われ、日本の人口の約14%が該当する。こうしたグレーゾーンの子どもたちは、周囲からはほとんど気づかれず、支援の対象外になってしまうことが多い。ここでは「すぐに被害的になる子」「感情の起伏が激しい子」「気持ちの切り替えが苦手な子」の3例を挙げ、その対応策を指導する。本稿は、宮口幸治『イラスト図解 境界知能&グレーゾーンの子どもの育て方』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● CASE1「すぐに被害的になる子」 どうせ自分はダメだしバカだから 周囲から見れば一見小さなことにもかかわらず、突然友達を叩いたり、周囲に極端な怒りを見せたりする子。そんな子は境界知能やグレーゾーンの子どもたちの中にも少なからず見受けられます。なぜなら彼らは、些細なことでも「周囲からバカにされた」「自分は嫌われている」などと思い込み、被害者意識を持つことがあるからです。 そういった子たちが被害者意識を持つ理由のひとつに、なかなか自分に自信が持てないという背景があります。たとえば、授業についていけない、落ち着きがなくてよく先生に注意される、友達づきあいが上手ではない、手先が不器用で字がうまく書けない、運動が苦手……などが重なると、次第に自信が失われ、「どうせ自分は駄目だ、周囲からバカにされている」との被害者意識が育ちやすくなることがあります。 また、視野が狭くなって物事の関係性がうまく読み取れず、状況を判断する力が弱いといった特徴が重なることもあります。自分にとって想定外の状況が起きると、自身が尊重されなかったと感じてしまうことで、それが怒りに変わっていきます。 その結果、カーッと感情が高ぶって、友達に手を出したり、大人に暴言を吐いたりして、人間関係のトラブルに発展してしまうのです。
● 「すぐに被害的になる子」の対応策 カーッとなる前に多角的に物事を考えさせる すぐに被害的になる子に必要なのは、何か不快な出来事があったとき、「ひょっとしたらそれは自分の勘違いじゃないかな?」と多角的に物事を考えさせる習慣を持たせることです。 「自分はバカにされている!」とカーッとなる前に、「自分のことをバカにしているからって、相手はあんな行動を取るだろうか?他に何か理由があったのではないか?」と立ち止まって考える癖をつけてもらいましょう。その練習を繰り返すことで、状況をいろんな角度から見られるようになります。 また、他人の感情を状況から推測させる練習も大切です。 たとえば、子どもがアニメを観ているときに、登場人物を指さして「この子は何を考えていると思う?」と聞いてみましょう。自分の感情分析は苦手な子でも「怒っている」「楽しそうだね」「落ち込んでるんじゃないか」などと、他人の感情ならうまく答えられるもの。 その他、日記などで日々の出来事や気持ちを書かせるのもオススメです。 大人になってからもこの傾向が続くと、より深刻な対人トラブルが起こり職場などでの社会生活にも支障をきたしてしまうこともあります。幼いうちから状況を多角的に見る練習をぜひ取り入れてみてください。