【児童精神科医が解説】「どうせ自分はバカでダメだから…」親が気付けない、キレやすい子が抱える“悩みの奥底”
● CASE3「気持ちの切り替えが苦手な子」 わがままな子のように見えがちだが…… 一度へそを曲げると一日中黙り込んでしまったり、友達とケンカしたら何時間もずっとその友達の悪口を言い続けてしまったり。このような行動を取る子は、「融通がきかない」とか「わがままな子」に見えるかもしれませんが、気持ちの切り替えが不得意なのが原因かもしれません。 少し専門的な話になりますが、人間の感情が生まれる過程には、脳の中にある大脳辺縁系という部位が関係していると言われています。 五感を通じて入ってきた外部の情報が認知の過程に入る前に「感情」というフィルターを通るので、感情のコントロールを制御できないと、正常な認知過程にもさまざまな影響を及ぼします。 そうすると、物事を冷静に判断できなくなり、感情の切り替えがうまくいかないことも起こりえます。その結果、「カッとなって、相手を無視してしまう」「よくないとわかっているのに怒りが止められず、不機嫌になる」などの行動につながってしまうのです。 はた目からはわかりづらいかもしれませんが、負の感情を引きずり続けるのは、子ども本人にとってもつらいもの。本当は感情に流されずに冷静な行動を取ったほうがいいと本人もわかっているのに、自分では解決法が見当たらなくて一人で悩んでいるかもしれません。
● 「気持ちの切り替えが苦手な子」の対応策 ひとまず気持ちをクールダウンさせてから考えよう 子どもが感情の切り替えが苦手な場合、ひとまず気持ちをクールダウンさせることが大切です。怒りを感じたらその場を離れたり別の楽しいことを考えたりなど、1人でも気持ちが落ち着く工夫を取り入れさせてみてください。 気持ちが落ち着いたなら、自分の感情を言語化して、一度客観視する習慣をつけてもらいましょう。「あの子に言われた言葉が悲しかった」「自分が悪者にされた気がしてつらかった」など言葉にしてみるほか、ノートや日記などに自分の気持ちを書き出してもらうのもいいでしょう。 また、何度も同じようなトラブルが起きる場合は、その事態が起こる前に自分なりの解決策を準備しておくことも大切です。 たとえば、学校などで、いつも友達とゲームを取り合いになってケンカに発展する場合、「先に友達に譲るほうがカッコいいかもしれない」と違う考え方を持ったり、「使う時間を分けたらどうか」など具体的な解決案を考えてみたりするという手段もあります。 さらに、「仮にあなたが不機嫌なままだと周囲の友達がどんな気持ちになると思う?」と問いかけてみるなどして、自分の行動が与える影響を客観的に考える機会を設けると本人の気づきにもつながります。
宮口幸治