<’20センバツ初の挑戦・カトガク旋風>/5止 仲間を信じ「思い切り」 厳しさが生んだ強さ /静岡
加藤学園の3番・大村善将遊撃手(2年)がバットの芯で捉えた白球が、快音を残し左翼席に飛び込んだ。昨年9月の秋季県大会準決勝の静岡商戦。0―2のビハインドで迎えた八回2死一、二塁で、劇的な逆転3点本塁打となった。大村遊撃手はダイヤモンドを生還すると、杉山尊三塁手(同)らとがっちり抱き合った。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 試合はそのまま3―2で逃げ切った。大村遊撃手は「何としても打とうと、失敗は考えなかった」。選手全員が勝つためにまとまり、積極的なプレーを貫く。加藤学園がスローガンにする「思い切りの良い野球」を示す試合となった。 東海大会でもチームはスタイルを貫いた。準々決勝の近大高専(三重)戦。延長十回1死一、三塁、米山学監督(41)は「ディレードスチール」のサインを出した。一塁走者がわざとスタートを遅らせて塁間で挟まれている間に、三塁走者が本盗を仕掛ける作戦だった。 相手投手が投球動作に入り、一塁走者・大村遊撃手が走った。捕手が二塁に送球した瞬間、三塁走者・平尾勝多右翼手(1年)は「送球が高い。いける」と好スタート。捕手のタッチをすり抜けて頭から本塁に生還し、決勝点となった。 「思い切りの良い野球」を掲げる理由について、米山監督は「どんなピンチでも全力で戦える強い気持ちがないと勝てない」と話す。チームにスター級の選手はいないが、一人一人の潜在能力は高い。全員がチームのために力を最大限に発揮すれば、強豪相手でも勝つチャンスはある。そのために「負けを恐れず、練習で積み重ねてきたことを思い切って出す勝負強さが必要」とする。 勝又友則主将(2年)も「自分たちは実力があるわけではない」と冷静だ。センバツ出場を決めてからの練習でも、ミスが起これば「ボールをよく見ろ」「しっかり取れよ」と選手同士が常に叱咤(しった)激励する。勝又主将は「互いに厳しい練習を耐え抜いてきた。だから、『こいつなら大丈夫』と仲間を信じ、思い切って戦える。甲子園でも自分たちの野球を貫き、勝ちに行きたい」と意気込む。=おわり ……………………………………………………………………………………………………… この連載は池田由莉矢が担当しました。