スコットランドで再び勢いづく独立論 立ちはだかる多くの壁
英国が国民投票で欧州連合(EU)から離脱することになり、スコットランドで再び独立論が勢いづいています。2年前の住民投票では否決となりましたが、状況は一変。今回の国民投票でもEU残留派が多数を占めたスコットランドのスタージョン首相は、「EU残留を決断したと述べ、独立に意欲を見せています。スコットランドの分離独立は不可避なのか。スコットランド政治に詳しい同志社大学法学部の力久昌幸教授に寄稿してもらいました。 【写真】<スコットランド投票>独立反対派が勝利した3つの理由
2年前の住民投票でも争点だったEU問題
6月23日に英国で実施された国民投票において、EUからの離脱を求める票が52%に達したのに対し、残留を支持する票が48%にとどまったことで、英国のEU離脱が決まりました。英国がEU離脱に向かう一方、英国の一部であるスコットランドの動向に注目が集まっています。英国全体では離脱票が多数となりましたが、スコットランドでは残留票が62%に達しました。その結果、EUへの残留を強く求めたスコットランドが、その意思に反して、EUからの離脱を強いられることになったのです。 スコットランドでは2014年9月に英国からの分離独立の是非を問う住民投票が行われ、そのときには反対多数で独立が否決されました。住民投票での否決により、独立を求める動きは鎮静化したように思われました。しかし、2015年の英国総選挙で独立派のスコットランド国民党(SNP)が、スコットランドの下院議席59議席中56議席を獲得するという地滑り的な勝利を収めました。また、今年5月に行われたスコットランド議会選挙でも、SNPが前回選挙に引き続き政権を維持することに成功しました。否決されたとはいえ、住民投票で見られた独立を求めるスコットランド人の期待が、SNPに対する強い支持として現れたわけです。 国民投票では、SNPをはじめとして、スコットランドの主要政党はEU残留を支持していました。実は、2014年の住民投票でも、EU問題は重要な争点となりました。SNPなど独立賛成派は、英国から独立したスコットランドはEU加盟を問題なく達成できるとしたのに対して、労働党や保守党など独立反対派は独立したスコットランドのEU加盟はかなりの困難が伴うということを強調しました。結局、EU加盟に関する懸念を払拭できなかったことが、住民投票における独立派の敗因の一つとなりました。 しかし、SNPは住民投票において、独立せずに英国に残留する方が、結果としてスコットランドのEU離脱につながる危険性を指摘していました。すなわち、保守党のキャメロン首相が2015年に予定されていた次期総選挙に勝利すればEU国民投票を実施することを明言していたために、英国の総選挙や国民投票の結果次第で、スコットランドの人々の意思に反してEU離脱が強いられる可能性があったのです。そして、まさにSNPの警告通り、英国の国民投票でEU離脱が確定したことから、スコットランドは望みもしなかったEU離脱を突きつけられることになりました。