スコットランドで再び勢いづく独立論 立ちはだかる多くの壁
さらに、住民投票の争点となったスコットランドのEU加盟の問題についても、英国のEU離脱によって自動的に認められるというわけではないでしょう。そして、英国から分離独立してEU加盟を求める場合には、ユーロ参加という問題も避けては通れません。ユーロ危機によって大きく評価を下げた通貨に、果たしてスコットランドの人々が参加を容認するのか必ずしも定かではありません。 そして、安全保障に関係する問題も、英国のEU離脱によってスコットランドの独立を促進するわけではありません。まず、ヨーロッパの安全保障の基盤となっているNATO(北大西洋条約機構)に対して、独立したスコットランドがすぐに加盟を認められるかどうかは定かではありません。また、独立をめぐって安全保障面での大きな争点となったスコットランドに存在する原潜基地の撤去についても、英国と独立したスコットランドの間で厳しい対立をもたらす可能性があることに変わりはありません。 このように、EUを離脱する英国からスコットランドが独立してEU加盟を果たすには、大きな課題があるということに間違いありません。しかし、英国のEU離脱という衝撃により、スコットランドでは英国やその中心に位置するイングランドに対する反発が高まっています。前回の住民投票では挫折した独立という目標が、近年中に実施される二度目の住民投票において達成されることも十分考えられるのではないでしょうか。
--------------------------------- ■力久昌幸(りきひさ・まさゆき) 1963年福岡県生まれ。京都大学大学院法学研究科修了。博士(法学)。1994年北九州市立大学講師、2005年から現職。専門分野、イギリスおよびアイルランドの現代政治。著書、『イギリスの選択:欧州統合と政党政治』、『ユーロとイギリス:欧州通貨統合をめぐる二大政党の政治制度戦略』など