“逆さミッキー”に見える!? ディズニー社が和菓子店ロゴマークに「不正の意図」とかみついた根拠
「連想」はさせても、ディズニーの事業と「混同」はしない
この点について、ディズニー社は「図形の向き(上下)が逆になっているという点は両者の構成上の共通性を凌駕するほど顕著な外観上の差異とはいえない」と矮小化している。 また、青木松風庵の商品を買った客のレビュー記事などを引用して、現実に「本件三ツ丸図形を『逆さミッキー』と称する等、本件三ツ丸図形を申立人のミッキーマウスと混同する事例が実際に発生している」と訴えている。 確かに、青木松風庵のロゴを見て「ミッキーマウスみたい」という感想を抱き、ミッキーマウスを連想するむきはあるだろう。 さらにディズニー社は「需要者が〔ミッキー図形のような〕構図の三つの円形を組み合わせた図を見れば、直ちにミッキーマウスを連想・想起してしまう程と評しても過言ではない」とまで豪語している。筆者のディズニーファンとしてのひいき目もあるが、これとてあながち大言壮語とはいえまい。 しかしながら、ディズニー社の主張を認め、青木松風庵の商標は不正でディズニー社に不利益をもたらすと評価すべきかと問われれば、それは否だろう。ディズニー社は「連想する」ことと「混同する」ことを、それこそ混同しているのだ。 青木松風庵の顧客は、そのマークからミッキーマウスを連想することはあっても、ディズニーが関与した店舗であるかのような混同をすることはない。 なぜなら、ミッキー図形とは上下が逆さまであって、それにより州浜紋の印象も与えるし、何より公式ミッキー図形が、商標として上下反転で配置されたことなどないからである。耳部分が下にあったらもはやミッキーのシルエットではない。似ているが、別物として十分に区別できるのである。 別物として十分に区別できる程度の相違点があり、混同のおそれがなければ、抽象的な連想をもたらすことがあったとしても、ミッキー図形の存在を理由に青木松風庵の商標登録を排除しなければならない理由はない。 まして、述べたように青木松風庵にも37年間もの使用による信用の蓄積があるのだ。抽象的にミッキーマウスを連想させるなどというディズニー社の「被害」の救済よりも、青木松風庵の積み重ねてきた信頼を保護する必要性の方が高いだろう。