“逆さミッキー”に見える!? ディズニー社が和菓子店ロゴマークに「不正の意図」とかみついた根拠
40年近く使い続けたロゴマークを今さら便乗と言われても…
確かに、ミッキー図形を逆さまにしたようにも見えるのだが、背景事情を考えると、このロゴマークの登録を青木松風庵から剥奪しようとはあんまりだ。 まず、同店は1984年に大阪で創業した和菓子店で、このマークは創業当初から使われている。84年といえば、千葉県に東京ディズニーランドが開園した翌年であり、今ほどディズニー人気も確立してはいなかった。このタイミングで、千葉や東京からは遠く離れた地で、キャラクターグッズやテーマパークとはまったく無関係の事業を展開している大阪の和菓子店が、ディズニーにフリーライドするメリットや必要性があったとは考えにくい。 しかも創業以来、実に37年間もこのマークを平穏に使い続け、地域からの信頼を積み重ねてきたのに、今になって「フリーライド」などと言われては困惑もひとしおだろう。 仮に百歩譲って、創業当初にミッキーマウスのシルエットが多少頭をよぎっていたとしても、それ以来、誠実な使用が続けられてきた今日においては、もはやミッキー図形とはまったく別のブランドとして、保護されるべき利益が宿っているというべきだろう。
ミッキーではなく“伝統家紋”では?
それ以前に、そもそも両マークは類似しているといえるだろうか?これはミッキーというよりも、日本の伝統家紋のひとつ「州浜紋」(図2)である。 青木松風庵自身は、マークの由来を、奈良盆地に鎮座しその山頂を結ぶと三角形を描く大和三山(香具山・畝傍山・耳成山)をモチーフにしたと説明しているが、浜辺にできる洲を由来とし、和菓子の「州浜」「すあま」の語源にもなっているこの紋は、代々、大阪湾に面した町で和菓子店を営んできた青木松風庵にぴったりの紋である。デザインの源流には州浜紋があるのだろう。 『日本の家紋』(人物往来社)は、州浜紋について「家紋としての州浜は、文様や実物よりも、ふくらみを持ち、三つの円形を寄せ合わせたように見える」と説明する。まさしくミッキー図形の特徴を備えた家紋である。 州浜紋は、室町時代の軍記文学『太平記』に記載があることから、その成立は遅くとも14世紀であり、当たり前だがミッキーマウスの映画デビューである1928年よりも遥かに昔だ。