Luup社長「違反者を撲滅できる」発言が炎上…急拡大する電動キックボードに渦巻く「いけ好かなさ」の正体
■CMから「生活インフラ」にしたい思いが伝わってくる 1カ月前の11月1日から、嵐の二宮和也さんを起用したテレビCMの放映が全国で始まっている。 CMの中では「もう、フツーでしょ?」というキャッチコピーが表示される。メッセージから「生活インフラ」として、日常的に利用されるサービスとして訴求したいというLuupの思いが見て取れる。 筆者自身は、電動キックボードの安全性は気になっている一方で、将来性に期待を抱いてもいる。「ラストワンマイル」という言葉がよく使われる通り、公共交通機関と目的地をつなぐ短距離移動の問題が解決されることで、生活がより便利に、かつ豊かになる可能性は高いと考えている。最近はバイクシェアサービス(自転車シェアリング)も普及してきており、短距離移動の問題は、さまざまな移動手段を想定して包括的に解決策を講じるべきだとも考えている。 ■LUUPは「市民の広い理解を得る」フェーズに移った 筆者には、スタートアップ企業の経営者や社員の知り合いが何人かいるが、“起業家精神”だけで成功できる世界だけでなく、規制や既得権益に対峙し、それらと戦ったり、懐柔したりと、一筋縄ではいかない世界である。 日本でライドシェアや民泊事業が成長できていないのもその壁が厚かったからだ。Luup社をはじめ、電動キックボード業界は、そこをうまくやったから成長軌道に乗ることができたのだが、現在の最大の課題は、もはや制度や既得権益との対峙ではなく、安全性の確保と、サービス利用者以外も含む、消費者への広い理解の獲得にあるようにみえる。 このたびの岡井社長の発言は間違いではなかったのかもしれないし、発言の一部が切り取られて、拡散してしまった側面もあるように思える。一方で、厳しい批判が出ている状況にも配慮して、もう少し丁寧な説明をしたほうがよかったのではないかとも思う。 いずれにしても、岡井社長が今回提言した対策を実行し、電動キックボードによる交通違反の数を減らすことが求められる。警察や官公庁、自治体との交渉力やネットワーク力も、それを実行することに活用していけば、「ズブズブ」「利権がらみ」という批判も和らいでいくのではないだろうか。