Luup社長「違反者を撲滅できる」発言が炎上…急拡大する電動キックボードに渦巻く「いけ好かなさ」の正体
■LUUPへの風当たりの強さの原因 1つ目について、「利用者が交通ルールを守らないので危険だ」という意見はよく耳にしてきた。そうした認識を持っている人が多かったため、岡井社長の「一部の利用者が何度も違反を繰り返している」という言葉に違和感を示す声が出てきたのだろう。 2つ目の安全性は、もちろん利用者側の問題もあるのだが、車体構造や運転姿勢自体に危険が内包されていると言われている。そうした中で、免許が不要で乗れることを疑問視する声も少なくない。2023年4月には、フランスの首都パリで電動キックボードレンタルサービスが、住民投票によって禁止となっている。 1、2のような状況にありながら、十分な規制がされないことへの批判も大きい。日本においては、2020年に電動キックボードの公道走行実証計画が、産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」に認定。2022年4月に公布された改正道路交通法には、電動キックボードに関する交通ルールの緩和が盛り込まれ、2023年7月に施行されている。 こうした動きに関して、「利権が絡んでいるのではないか?」という疑問を抱く声も出てきている。今年10月、元警視総監がLuup社の監査役に就任した。同社は「交通ルールの周知や安全対策の強化について指導を賜りたい」と説明しているが、メディアやSNSでは「天下り」とする批判的な意見が目立った。 ビジネス環境の面では追い風が吹いている一方で、非利用者からのLUUPに対する風当たりは強まっているというのが現状だ。今回の炎上は、そのギャップが顕在化したとみることができる。 ■Luupが陥っている成長と安全のジレンマ 一歩引いて見ると、交通ルールを守らないのは利用者の問題であるし、安全対策はLuup一社だけでなく業界全体で取り組むべき課題であり、法制度や監督官庁の問題でもある。一方、Luup社は急成長しているとはいえ、赤字のベンチャー企業だ。どうして、Luup一社が集中砲火を浴びてしまうのだろうか? その理由は、すでに説明してきた通りだ。電動キックボード事業に有利な制度設計がされており、電動キックボードシェアリングサービスでLuup社が圧倒的なシェアを誇っていることから、同社に対して責任を問う声も必然的に大きくなってきている。 岡井社長は、「省庁や自治体、警察などあらゆる関係先との調整や折衝、コミュニケーションを繰り返してきた」と話している。こうした上からの「お墨付き」によって信頼性を獲得し、ポートを急速に拡大させて、利用者の利便性を向上させる――という好循環を生み出すことに成功している。 その反動で、「成長性を重視して、安全性を犠牲にしてきた」という批判が同時に巻き起こることになったのだ。