広島・矢崎 16年ドラ1がヤクルト移籍 慶大出身、再び神宮へ「よい転機として」 松田オーナー「チャンスを」
出場機会に恵まれない選手救済の「現役ドラフト」が9日、オンラインによる非公開で開催され、広島からは矢崎拓也投手(29)がヤクルトへ移籍することが決まった。昨季は24セーブを挙げるなど、近年は中継ぎ陣の一角として奮闘していた2016年度ドラフト1位右腕が、新天地で新たなスタートを切る。一方で広島はオリックスから山足達也内野手(31)、日本ハムから鈴木健矢投手(26)の2人を獲得した。 【一覧表】現役ドラフト「ドラ1」3選手が移籍 公表されたリストには驚きの名前が載っていた。昨季は一時期クローザーも務めていた矢崎が、出身地でもある在京球団に活躍の場を移す。唐突な知らせを受けた右腕は球団を通じて、「突然のことで驚いていますが、よい転機として受け止めたいと思っています」とコメントした。 2016年度ドラフト1位で実績もある投手の“放出”。取材に応じた松田オーナーは「チャンスをあげるのにはちょうどいいかなと思った。若い子を育てていかないといけないし、そういう意味で良いんじゃないかと思う。本人はショックかもしれないけどヤクルトだから。(神宮球場は慶大出身の矢崎にとって)慣れたところ。そういう意味では一番良いところに行ってくれた」と説明し、親心もにじませた。 矢崎は今季26試合に登板して1勝1敗、防御率3・60の成績を残した。開幕から1軍に帯同するも7月中旬に2軍降格。その後はウエスタンで13試合に登板して1失点の好結果を残し、再昇格の機会をうかがっていた。 ただ、9月に大失速してBクラスに沈んだ1軍から声がかかることはなく、シーズンが終了。11月の契約更改の席では「競争は得意ではない。やることをやって、自分のベストパフォーマンスを出すことが目標」と来季への思いを語っていた中での移籍決定となった。 広島には8年間の在籍。新人年の4月にヤクルト戦でプロ初登板初先発し1勝を挙げるも、その後、4年間未勝利の苦しい時期を過ごした。それでも腐ることなく、22年から中継ぎに本格転向したことで実力が開花し、昨季はクローザーとして24セーブを挙げて栗林の穴を埋めてみせた。 酸いも甘いも味わった広島での日々。矢崎は「8年間お世話になって広島東洋カープに心から感謝申し上げます。そしていつも熱く応援してくださったファンの方々が自分の力になっていました。本当にありがとうございました。これからは指名していただいた東京ヤクルトスワローズの勝利に貢献できるよう、ベストを尽くしたいと思います」と前を向いた。慶大時代は神宮で通算24勝を挙げ、カープの門をたたいた。原点ともいえるマウンドで豪腕を振るう。 ◆矢崎 拓也(やさき・たくや)1994年12月31日生まれ、29歳。東京都出身。176センチ、99キロ。右投げ右打ち。投手。慶応から慶大を経て、2016年度ドラフト1位で広島入団。17年4月7日・ヤクルト戦(マツダ)でプロ初登板初先発初勝利。23年はキャリアハイとなる54試合で4勝2敗24セーブ、10ホールドで防御率2.81。