BLから飛び出して、新たに得た「自由」 一般文芸でも開花した“腐女子”作家、凪良ゆう
ずっと“腐女子”だった
姉たちの影響で、幼いころから大の漫画好き。『ジャンプ』『りぼん』『花とゆめ』など、あらゆる漫画雑誌を読みあさっていた。漫画家を目指して、『マーガレット』に作品を投稿していたこともある。もちろんBLファンであり、自身を“腐女子”と呼んではばからない。現在40代後半である凪良の少女時代には、男性同士の恋愛を描いた漫画が、普通に一般漫画雑誌に掲載されていた。 「『花とゆめ』が特に顕著でしたけど、男性同士の過激な性描写のある漫画も掲載されていたり、幼いころから、そういうのは普通に受け入れていました。BLなんて言葉もない、30年以上前の雑誌ですけどね。男性同士だけじゃなくて、女性同士の話だったり、今思えば、すごい内容ばかりだったなと思いますけど(笑)、本当に、『花とゆめ』は闇鍋みたいな漫画雑誌で。ほかにも『花の24年組』と呼ばれる漫画家の先生方も同性愛を自然に描いていましたし。だから、私自身は、少女漫画、少年漫画、同性愛を描いた漫画、どれも差はなくて、全部好きでした」
子供のころから漫画家を目指していたが挫折。漫画を描かなくなって、10年以上が過ぎたころのこと。ある日、インターネットでSF小説『銀河英雄伝説』の記事を見つけ、「ああ、若い頃、この小説にハマっていたなあ」と思い返した。そこから銀英伝にもう一度深入りするうちに、創作意欲が再燃。また漫画を描きたくなったが、もう絵を描く技術が錆びついていた。そこで、小説にしてみようかなと思いついた。最初は趣味の延長で、遊びのような感覚だった。 「『銀英伝』には、勝手にカップリングを作ったりして、腐女子的なはまり方もしてたので、はじめに書いたのは『銀英伝』の二次創作の小説です。書きはじめたら、もうすごく楽しくて、ずーっと1日中書くようになって、『そんなに書きたいならプロになればいいのに』って家族から言われたんですよ。その時に『あ、そうか、そういう道もあるんだな』と思って。投稿は漫画家を目指していたときにしていたので、ハードルも低くて。じゃあ何か書いて送ってみよう、と」 BL作品の投稿をきっかけに、凪良が作家になったのは、30半ばのことだ。そこからは、物語を書くことにとことんのめり込んだ。 「あまりにもわたしが創作にのめり込みすぎて、それで離婚して一人暮らしをはじめたんですけど、荷物はほとんど置いてきました。仕事机すら持って出なかったので、引越し用の段ボール箱があるじゃないですか、あの上にパソコンを置いて、その上でずーっと書いてました。締め切りもありましたし、机を買いに行く時間があったら小説を書いていたかった。1 カ月くらいそんな状態。ベッドと、段ボール箱と、本箱しかない生活(笑)」