BLから飛び出して、新たに得た「自由」 一般文芸でも開花した“腐女子”作家、凪良ゆう
荷物も友だちも少ないけど幸せ
凪良の小説の中に登場する「生活」の描写は細やかだ。登場人物が暮らす部屋の雰囲気、インテリア、雑貨のディテールまでを丁寧に描く。食事の風景や、メニューについても、具体的で、食欲をそそる。しかし、作者の暮らしぶりは、真逆だ。 「以前はそうじゃなかったけど、小説を書くようになってからは、家は眠れて仕事ができたらそれで充分になった。より快適な住空間を求めようにも、引っ越しって面倒くさいじゃないですか。まとめたり、いろんな手続きをしたり。もうそんなことをする暇があったら小説書いていたい」
「物欲もあんまりなくって、家の中はがらんとしてます。物がいっぱいあるのが苦手なんですよ。何かソワソワしちゃうっていうか、息苦しくなるというか。だから人間関係も、浅く広くというタイプでは全然なくて、深く少人数で、という感じ。荷物も、友だちも少ないです」 食べ物にも、あまりこだわりはない。食べると眠くなってしまうので、仕事中はあまり食べない。眠くなると書く時間が削られてしまうから、と凪良は笑う。 「朝、7時ぐらいに起きて、歯を磨いたりしたら、もう、すぐ仕事。15時ぐらいに本当に空腹がひどくなってくると、頭が回らなくなっちゃうので、それで食べる。代わりにお酒はたくさん飲みますね。銘柄にこだわりはないです。お酒であればもうそれでよくて、おいしかったら嬉しいけど、まずくっても特に文句もないし」 15時ごろ、野菜と肉を調理したものとオートミールなどを食べる。1時間ほど、筋トレなど家の中でできる運動もする。そのほかは、ずっと小説を書くことに時間を費やす。自称、引きこもり。 「『そんなに家にこもってて、よくネタが出てくるね』って言われるんですけど。殺人犯が殺人の話を一番うまく書けるわけではないので、それと同じなんじゃないかな。頻繁に外に出ても、ネタが拾える人と拾えない人がいると思う。テレビは、見ますよ。音は消して、画面だけ。NetflixやAmazonプライムで映画とかを観てるほうが多いですかね。音をつけていても、書いてて集中すると何ももう聞こえなくなるじゃないですか。だから10回ぐらい観てても内容が分からない映画とか結構あるんですよ。ずっとBGM的に流れてて」 書いて書いて、眠くなるまで書いたら、一日が終わる。