<春に挑む・二松学舎大付センバツへ>/上 「4季連続」経験を糧に 全国の強豪意識し練習 /東京
春の便りが届き、指揮官の体が何度も宙に舞った。二松学舎大付のセンバツ出場が決まった1月27日、千代田区の校舎で野球部の選手たちが市原勝人監督を胴上げし、喜びを表現した。エースの重川創思(2年)は「(センバツでは)優勝しなければという思いが強い。気を引き締めて練習したい」と語った。 チームは2021年夏から甲子園に続けて出場しており、このセンバツで4季連続になる。昨夏の甲子園に出場した選手は現チームに8人残る。その経験がチームの土台になっている。 1年秋から捕手として活躍し、これまで2度甲子園に出場している押切康太郎主将(同)は、昨夏の甲子園3回戦で同年のセンバツを制した大阪桐蔭(大阪)と対戦した時のことを覚えている。相手の強力打線に9安打を打たれたが、要所で投手陣を巧みにリードして4失点に抑えた。「めちゃくちゃ上の存在ではないんだな」。そう感じたという。 甲子園を経験して意識が変わった選手も多い。内野手の柴田壮太朗(同)は昨夏、札幌大谷(北海道)との1回戦で代打出場を果たし、他の試合でもベンチで出場機会を伺った。「今までは東京で勝つことを目標にしていたけど、大阪桐蔭とあたった後は全国の目線で練習しようと意識が変わった」と語る。 大舞台での激闘を経て、全国的に名前の通った強豪校とも良い勝負ができる自信も育まれた。練習も全国の相手をイメージして取り組むようになった。甲子園が選手を成長させてくれた。 チームがここまでたどり着くのは容易ではなかった。春夏通算11回の甲子園出場をほこる同校だが、強豪校と呼ばれるまでには長い「負けの歴史」があった。センバツは過去6回出場したうち、秋季都大会で優勝したのは2回だ。夏は14年に東東京大会を制するまで、決勝で10連敗した。市原監督は「時間をかけて上がったチームはなかなか落ちない。先輩たちの苦しみが、現状維持に満足しない体質を作ってくれた」と話す。 先輩の姿は後輩にも影響を与えている。昨夏の甲子園、当時主将だった小林幸男さん(3年)がベンチから「楽しんでやっていこう」などと大声でチームメートを励まし、雰囲気を盛り上げた。その姿を見た大矢青葉(2年)は「小林さんのように仲間を活気づけられるようにやっていきたい」と話し、現チームでは副主将として積極的に声を出すようになった。 先輩の姿から学び、大舞台で経験を積んできた選手たち。再び戻ってきた甲子園で新たな歴史を作っていくつもりだ。【小林遥】 〔多摩版〕