柱は「エネルギー」「防衛」…売上高5.7兆円へ、新社長は三菱重工をどうけん引するか
約6年ぶりの社長交代を発表した三菱重工業。2025年4月1日付で泉沢清次社長の後任として伊藤栄作常務執行役員が昇格する。エネルギー、防衛事業を柱に、26年度に売上高5兆7000億円(23年度実績約4兆7000億円)、事業利益4500億円以上(同2825億円)を目指す三菱重工をどのようにけん引していくのか。 【写真】三菱重工新社長の伊藤栄作氏 伊藤次期社長は研究所出身でほぼ火力発電向けガスタービン一筋で歩み、世界シェア首位奪取に貢献した。20年からは最高技術責任者(CTO)を務め、全社のデジタル化や新事業創出をけん引した。当面、ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)や防衛で稼ぎ、新事業への投資を厚くするというフェーズに入る三菱重工にとって、うってつけのトップといえる。 課題は何か。国産旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」の撤退をもって、事業面での大きなリスクはなくなった。まずは6兆円規模という、未踏の受注高をいかにこなすかが問われている。「旺盛な受注をいただいており、しっかり顧客に届ける事業体制とバリューチェーンを構築することが喫緊の課題」と伊藤次期社長。 三菱重工は過去、良くも悪くも「よく知らない分野の大プロジェクトにチャレンジしてしまう」(伊藤次期社長)ことが多かった。代表例が長崎造船所(長崎市)で手がけた客船。2500億円規模の損失を計上し、社内では今もプロジェクト管理の教育題材として使われる。 足元では水素をはじめ新エネルギー関連で世界的に大型プロジェクトがめじろ押しだ。エネルギー革命の流れに追随して成長を確かなものにするには、過去の反省を糧に「先を読む」(同)力が求められる。 新しい“総合重工像”を示せるかも注目だ。三菱重工は約700の技術分野、500以上の製品を持ち、コングロマリット(複合企業体)ディスカウントを指摘されがちだ。これに対し、伊藤次期社長は「たくさんのピースを持ち、賢くつなぐことで大きな価値を短時間で実現できる」と断言。新事業創出に意欲を見せる。