物作りはお酒を飲みながら 「捨てられる運命だった」布やボタンが生まれ変わる DIYバーが解き放つ「大人の創造性」
物作りから生まれる人と人とのつながり
――リンネバーではどのようなことができるのか教えてください。 基本的には、お酒を飲みながら物作りを楽しむ場所です。でも、ただの工作教室ではありません。私たちが大切にしているのは、固定観念を取り払って、新しい発想を生み出すことです。 最初は3種類だけだったDIYアイデアも少しずつ増やしていき、今では17種類以上を用意しています。すべて、初心者でも安全に楽しめるように工夫しています。 面白いのは、お客さんの反応です。「先生がいて教えてくれるんですか?」とよく聞かれるのですが、私たちは作り方を教えるわけではありません。アイデアのマニュアルと材料、道具を提供するだけです。最初は戸惑う人もいますが、みなさん、だんだん自由に楽しみ始めるんです。 企業研修やチームビルディングの場としても使われています。ここでは上司も部下も関係なく、みんな同じ立場で物作りを楽しむことができます。そうすると、普段見ることができないような一面がお互いに見えてきて、新しいコミュニケーションが生まれるのです。 ――オープンは2020年2月。コロナ禍での経営は大変だったと思います。 オープン直後にコロナの影響が出始めて、本当に大変でした。でも、逆に面白い出会いもありました。近所に住むエンジニアの方が、リモートワークで話し相手がいなくて寂しいと、自転車で辺りを走っていた時にこの店を見つけてくれたのです。 最初はお茶を飲みに来てくれるだけでしたが、私たちの作業を見ているうちに「手伝いましょうか」と声をかけてくれました。そのうち物作りにもハマってくれて、今では素晴らしいもの作りの達人になりました。 また、若い方々との出会いもありました。大学生の頃にお客様として来店してくれた方が、私たちの理念に共感してインターンとして参加してくれました。その後「ここでやっていきたい」と言ってくれて、今では大切な仲間になっています。 確かにコロナ禍での経営はたいへんでしたが、人とのつながりを求めている人がいて、そういう人たちにとってリンネバーが居場所になれたのはうれしかったですね。 ――物作りをするための材料がたくさん並んでいます。どのように集めているのですか。 最初は本当に身近な人に声をかけて集め始めました。実家の押し入れにあった古いボタンや、カーテンの端切れなど、さまざまな物を扱いました。すると予想以上の反響があって、親から親戚へ、そこからさらに知り合いへと輪が広がっていきました。多くの人が、捨てられないけど、どうしたらいいかわからないものを持っているのだなと気づきました。 今では全国からいろいろな方が材料を送ってくれます。一緒に手紙が添えられていることが多く、「母の形見のボタンです」「祖母の着物です」など、その物にまつわる思い出が書いてあります。それぞれの物に物語があるので、私たちも次の方に大切に利用してもらえればと思っています。