ルールなき冤罪救済の法手続き 「再審格差」是正の訴え国会でも
確定した有罪判決に誤りがあり、無罪を言い渡すべき証拠を新たに発見したときなどに裁判をやり直す「再審」。冤罪(えんざい)救済の〝最後のとりで〟だが、実は再審法と呼ばれる再審に関する規定は、500条を超える刑事訴訟法のうちわずか19カ条で、審理の進め方を定めたルールも存在しない。再審の可否を決める再審請求審で、中身ある審理が行われるか否かは担当裁判官のやる気次第という意味で、「再審格差」が生じているとの指摘も根強い。 静岡県で昭和41年、一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さんを巡っては、再審判決が26日に予定され、無罪の公算が大きい。袴田さんのケースは再審法の見直し機運を一気に高める要因ともなった。 「袴田事件の再審請求において死刑確定から30年、一つの証拠の開示も許されなかったんです。私は法の不備、手続き保障がなされていないということだと思います」 今年3月の衆院法務委員会。質問に立った自民党の稲田朋美議員は、法務相にこう迫った。 刑事裁判で弁護側は、捜査機関が集めた証拠のうち、検察が開示したものしか見られない。裁判官が目にする証拠はより少なく、双方が立証のために法廷に提出するものだけだ。判決確定後は検察が証拠を開示する義務はなく、再審請求審で裁判所が開示を勧告しても検察が拒否することも珍しくない。 一方で冤罪を疑わせる「新証拠」は、捜査機関が保管する証拠の中にあることが多い。袴田さんの事件の再審請求審で、検察側が初めて証拠を任意開示したのは判決確定から30年後の平成22年。犯行着衣とされた衣類のカラー写真などが開示され、これが再審開始を導くカギとなった。開示証拠は最終的に約600点に上った。 法務委員会では野党議員からも再審法についての質問が相次いだ。いずれも今年3月発足の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」に所属。議連会員は当初の134人から347人に増え、衆参の議員定員計713人の半数にも迫る勢いだ。 議連は、再審請求審に審理の進め方や証拠開示のルールがなく、公平性が担保されていないことや、再審開始決定に検察側が不服を申し立てる制度があり、救済に数十年間を要したケースがあることなどを問題視。6月に法相に再審法改正を要望したが、議論が進まない場合、議員立法によって再審制度を整備することも視野に入れる。