「料理は努力したものがそのまま形になる」長谷川あかりさんがタレントを辞め、料理家になった理由
小竹:高校時代に思い出に残っているエピソードはありますか? 長谷川:「あかりのおにぎりの日」みたいなのがあって、クラスメイトの仲いい子におにぎりを週に1回くらい配っていたんです。 小竹:すごい日ですね。 長谷川:それが今のレシピ作りの始まりと言ってもいいのですが、友達に好きな味や好きな具材を聞いて、自分で組み合わせを考えてカスタマイズした状態で1人ずつ違うものを作ってあげていました。 小竹:それぞれ違うのですね。 長谷川:味の組み合わせを想像したり、喜んでもらうためにどういうおにぎりを作ろうかと空想したりする時間ごと好きだったので、それが今の仕事の原体験になっているかもしれません。 小竹:それはすごくいい経験ですね。 長谷川:それがなかったらレシピを作ることの面白さに気づけなかったと思います。おにぎりなのでレシピというよりは組み合わせだけですけど、組み合わせの面白さや楽しさに目覚めましたね。
師匠である有賀薫さんから学んだこと
小竹:そういうものを作りながらも、より深く学びたいと思って栄養の勉強もされたのですよね? 長谷川:そうですね。違う道もあるかなと思って芸能活動を辞めたのはいいものの、どうしようかとなったときに、私は高校を卒業して大学に行かずに芸能活動を続けていたので「大学に行ったら?」と夫に言われて。 小竹:はいはい。 長谷川:ただ、ある程度は明確にこのために頑張るという目標がないと、ぼんやりと4年間は今の年齢からはちょっと難しいと思ったので、料理が好きだから短大で栄養士の資格取得を目標に頑張ろうと思って、まず短大に入ってそこから4年制の大学に編入しました。 小竹:管理栄養士の資格を持ったことは今の料理にも活かされていますか? 長谷川:めちゃくちゃ活かされています。それがなかったら料理家になろうとは考えなかった。最初に短大に入ったときは、なれるものが無限にあると思っていた状態なので、料理家になりたいとは全く思っていなかったんです。 小竹:うんうん。 長谷川:ただ、やっぱり自分のやりたいことと人から評価されることのうまい交差点で私は生きていきたいんです。栄養学を学んでいく中で、栄養学はそこまでキャッチーな学問ではないことに気づいて、自分自身がキャッチーな人間になって地に足のついた発信をしないと広まっていかないとすごく実感したんです。 小竹:なるほど。 長谷川:だから、今までやってきたことを活かしながら、しっかりと自分が影響力を持つことで、正しい栄養学やおいしい料理を通した暮らしやすくて心地よい生き方みたいなものをシェアしていけたらいいなと思うようになり、それができる職業は料理家かなと考えました。 小竹:最初はスープ作家の有賀薫さんのアシスタントをしていたそうですが、それはどういうきっかけで? 長谷川:大学4年生の頃から料理家になりたいと思い始めていたのですが、どうやってなるのかもわからず、私はレシピ本が好きというのが原体験としてあるので、レシピ本を出版したり料理雑誌に出たりする人になりたいと思ったんです。 小竹:うんうん。 長谷川:そう考えたときに、SNSだけを頑張るというのは自分の中でちょっと違うかなと感じて。それは料理インフルエンサーになるので、私が憧れている雑誌やメディアでレシピを発表していくという形とは少しずれてしまうイメージがあったんです。 小竹:はいはい。 長谷川:今は数の時代ではあるので、インフルエンサーとしてもある程度は認知されないといけないけれど、そこだけだと自分の思い描いている料理家像ではなくなってしまう。自分が思い描いている活躍をされている方のアシスタントをしないと同じような活躍の仕方はできないだろうと思いました。 小竹:料理家の世界に入っていかないとですよね。 長谷川:そんなときに、有賀先生がアシスタントを募集するというのをSNSで見て、有賀先生の料理に対する考え方や発信していることがすごく好きだったので、もう採用していただくしかないと思って。 小竹:どんなことを書いて送ったのですか? 長谷川:自分が作っていきたい料理とか、自分が料理を好きになったきっかけとかをワーッと書いて送って、面接をしてもらって、お手伝いさせてもらえるようになったという感じですね。 小竹:実際に有賀さんのアシスタントをされて、どういった学びがありましたか? 長谷川:もう全てですが、実務的なところで言うと、レシピ本の撮影はこういう段取りでやるんだとか。例えば、スタッフさんが来たときに、まずはお茶を出して、撮影にこんな感じで入っていってとか、そういう細かいところからですね。 小竹:うんうん。 長谷川:レシピ作りでの素材の味の活かし方や発信の仕方も学びました。有賀さんは決してバズらせようとしているわけではないのにグッとくるものがあるのは、この料理がおいしいから作ってほしいというのはもちろんですが、それ以上に料理を通した別のことを伝えようとしている面があると思うんです。 小竹:そうですね。 長谷川:料理が媒体として活躍しているという、新たな料理SNSの運用の仕方だなと感じます。料理を発信するSNSは「これがおいしいから作ってね」「こうするとおいしいよ」ということが主軸になりがちですが、有賀先生は「この料理が生活をどう良くするのか」まで見せる発信の仕方をされるので、それは私もやりたいとすごく思いました。 小竹:有賀さんはスープ作家ですが、作家というだけあって、その先に物語がありますよね。 長谷川:そうなんです。物語がレシピを通して見えるし、見せてくれるし、有賀先生のスープじゃなきゃいけない理由がレシピの中に詰まっているから替えが利かない。スープのレシピはたくさんあるけれど、有賀先生のスープを作りたいと思わせる力があるので、それは何に起因しているのだろうというのはすごく考えますね。 小竹:長谷川さんもそこは考えますか? 長谷川:そうじゃなきゃいけないなと思いますね。「長谷川あかりさんのこれを作りたい」と思っていただくにはどうしたらいいのだろうということをすごく考えます。 (TEXT:山田周平) 【ゲスト】 ■長谷川 あかりさん 料理家・管理栄養士/10歳から20歳まで子役・タレントとして活動。大学で栄養学を学んだ後、SNSで手軽かつオシャレなレシピを発信し、瞬く間に人気アカウントに。雑誌、WEB、テレビなどでレシピ開発を行う。7月3日に初のパーソナルムック『DAILY RECIPE Vol.1』(扶桑社)を発売。著書に『つくりたくなる日々レシピ』『クタクタな心と体をおいしく満たす いたわりごはん』『いたわりごはん2 今夜も食べたいおつかれさまレシピ帖』『材料2つとすこしの調味料で一生モノのシンプルレシピ』がある。 X: @akari_hasegawa https://x.com/akari_hasegawa Instagram: @akari_hasegawa0105 https://www.instagram.com/akari_hasegawa0105/ 【パーソナリティ】 ■クックパッド株式会社 小竹 貴子 クックパッド社員/初代編集長/料理愛好家。 趣味は料理。仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。 X: @takakodeli https://twitter.com/takakodeli Instagram: @takakodeli https://www.instagram.com/takakodeli/
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