不動産の共同所有はやめておけ…亡き妻の「姉」と共有名義人になってしまった男性。共有関係を“イチ抜け”するには?【行政書士が回答】
共有物に対する「変更行為」「管理行為」「保存行為」とは?
3つの行為を具体的に見ていきましょう。 ■1.変更行為 変更行為とは、共有物の形状や効用に変更を生じさせる行為で、共有物の変更をする場合には、共有者全員の同意を要します(民法第251条)。変更行為には、「物理的変化を伴う行為」と「法律的に処分する行為」があります。主な具体例は、次のとおりです。 <物理的変化を伴う行為> ・土地の造成(田畑を宅地に造成する工事、盛土等の造成工事など) ・建物の大規模な改修、建替え、解体 ・土地上の建物建築 など <法律的に処分する行為> ・所有権を失う契約の締結(売買契約、贈与契約) ・短期賃貸借期間(※)を超える、または借地借家法の適用がある賃貸借契約の締結 ・共有不動産全体に対する担保権(抵当権等)の設定 など ■2. 管理行為 管理行為とは、共有物の性質を変更しない範囲での利用・改良する行為で、各共有持分の価格の過半数を有する共有者の同意を要します(民法第252条本文)。主な具体例は次のとおりです。 ・共有物の使用方法の決定 ・賃貸借契約(「民法第252条(4)に定める期間(※)」を超えず、借地借家法の適用がないもの)の締結や更新、解除 ・一般的な賃貸借(サブリースによる例外あり)の賃料変更(増額、減額) など ■3. 保存行為 保存行為とは、共有物の物理的な現状を維持し、他の共有者に不利益が及ばない行為をいいます。そのため、各共有者が単独で行うことができ、他の共有者の同意を要しません(民法第252条(5))。主な具体例は次のとおりです。 ・共有する建物の修繕 ・法定相続による所有権移転登記 ・不法占有者等への明渡請求、無権利者への所有権抹消請求 など
法改正により、「変更行為・管理行為」の規制がやや緩和された
近年の共有不動産を巡るトラブルや所有者不明土地の解消に向け、各規制をやや緩和する方向で、改正民法が令和5年4月1日に施行されています。 主な内容として、変更行為では、共有物の形状または効用の著しい変更を伴わないものを変更行為から除外し、全員の同意がなくても行うことができるものとしました(民法251条(1)括弧書)。例えば、共有する建物のトイレを和式から洋式に変更するリフォーム工事などです。また、他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときには、その所在を知ることができない共有者「以外」の共有者からの同意があれば、共有物に変更を加えることができる旨の裁判ができるものとしました(民法251条2項)。 また、管理行為では、一部共有者の存在や所在が不明のとき、不明共有者以外の共有者の持分価格の過半数で共有物の管理に関する事項を決定できる旨の裁判ができるようになっています(民法第252条(2))。
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