「まずは俺たちの最低限の要求を呑め。話はそれからだ」トランプ大勝利で、プーチンが抱く「本音」と「懸念」
プーチンがアメリカに呑ませようとしていること
プーチンからすれば、アメリカの大統領は新しくなったとしても、アメリカに対する要求が新しくなるわけではない。またプーチンはウクライナ侵攻後に相当やばいことを言っていたが、その主張の骨子は侵攻前から一貫している。 ロシアからの主張を要約するとこのようになる。 1.たとえどのようなコストを払うことに対しても、ロシアはNATOが旧ソ連圏に拡大することを止めるつもりであると何度も主張してきた 2.2021年末にロシアはアメリカとNATOに対して「旧ソ連圏に拡大するな」「97年のラインまで戻れ」とお願いしたが、アメリカもNATOも我々の懸念に対しては耳を傾けてこなっかったし、まともな対案も出してこなかった 3.我々は何度も騙されてきた。西側諸国はやらないはずのNATOの拡大を繰り返し、ウクライナもロシアとの約束を守らなかった。もうだまされるつもりはない 4.話し合いに応じないのなら、我々のやり方で問題を解決するしかない ウクライナ侵攻によって、要求は増えたが、その主張は明確である。「次はお前らがロシアの話を聞く番だ」である。 ロシアからしたら、「我々はあらゆる手を使ってでも、ロシアの国益を守る用意があるとは十数年以上何度も言い続けた」という不満があり、現在は「できる方法でロシアの国益を守っているのにすぎない」のだ。いわば、「ロシアに交渉に戻ってほしかったら、まずは俺たちの最低限の要求を飲め。話はそれからだ」が現在のプーチンの立場だ。 プーチンがエスカレーション戦略を多用するのもこれと関連している。ロシアは緊張を高めることによって、アメリカに「これ以上はまずいかもしれない」と思わせ、ロシアとの話し合いに応じさせようとしているのだ。ウクライナ侵攻前は、「下手したら、戦争になるのかもしれない」と危惧させようとしていたのが、現在では「このままでは核兵器が使われるのかもしれない」へと段階が上がっている。 エスカレーションはアメリカを交渉の場に引き出すための手段である。プーチンの取る戦略は残酷なほどシンプルだが、アメリカがロシアの期待に応えないリスクを抱えている。