犬スポット訪問記(2)「甲州街道・犬目宿」義民の逸話と桃太郎伝説
最初は自分の犬だけがかわいいと思う人も、やがてその犬種全般を愛するようになり、最後には犬に関係するものはなんでも好きになる。愛犬家にも色々あるが、これが僕の持論である。この「犬ならなんでも好き」な第三段階になると、「犬目」とか「犬帰りの淵」、あるいは「犬ころの滝」などという場所を地図やナビで見つけると、迷わず立ち寄ってしまう。何か犬に関係のある謂われがあるのだろうと思うと、実際にどんな場所か確かめたくなるのだ。 【写真】犬スポット訪問記(1)「木曽・犬帰りの淵」犬は本当に帰ったか? 少し検索するだけで「犬」がつく地名はいくつも出てくる。滝の名前などの固有名詞を含めれば全国に数えきれないほどあるようだ。その中から、出張や旅の途中でたまたま立ち寄った5つの「犬スポット」を紹介しよう。(内村コースケ/フォトジャーナリスト)
旧甲州街道の宿場町
東京で満開の桜を見た帰りに訪ねた「犬目」は、旧甲州街道の宿場町だ。「犬目宿」と言った方が通りが良いかもしれない。現代の行政区分的には山梨県上野原市の一地区ということになり、国道20号からだと上野原駅または鳥沢駅方面から山道をしばらく上がって行った山中に、忽然と現れる。こう書くと山奥の秘境というイメージもあるが、中央自動車道の談合坂SAから直線距離で目と鼻の先だ。
今回は車で行ったが、中央本線の四方津駅などからバスも出ている。車や徒歩・自転車で行く場合は、ナビやスマホの地図アプリで『犬目宿直売所』を目指して行くといい。集落の中心部にその公民館兼農産物直売所がある。
僕が訪れたのは初春のある日曜日。そこに車を停めると、もう日没が迫っていた。店はもう閉まっていたが、碑と案内板があった。案内板にはこう書いてある。
<犬目宿のいわれ> 犬目宿は、一つの村が「宿」そのものになった形と考えられます。言い伝えによれば、正徳2年(1712)、現在の集落より600mばかり下方の斜面(元土橋)にあった部落が、急遽そのまま現在の所に移住し、その翌年、宿駅起立の際に、統一的意思により「一村一宿」の宿場として創設されたということです。天保14年(1842)においては、戸数56戸、人口255面、本陣2、脇本陣0、旅籠15(大3、中3、小7)を数えた山峡の小さな宿場です。 平成7年3月上野原町教育委員会