犬スポット訪問記(2)「甲州街道・犬目宿」義民の逸話と桃太郎伝説
義民「犬目の兵助」
肝心の「犬」の由来は書かれていないが、案内板の地図をよく見ると、犬目宿の中に、さらに「犬目兵助の墓」「犬嶋神社」という犬スポットがある。早速、そこへ行ってみようではないか。
旧街道沿いの看板にしたがって丘の上の小さな墓地に入ると、頂上付近に「犬目村兵助の碑」が立っていた。真ん中の「先祖代々の墓」が実際の墓で、碑は国会議員ら有志が建てたもののようだ。
で、「犬目の兵助」って誰よ? って事になるわけだが、直売所に戻って少し行った所にこの人の生家があり、そこに説明板が立っていた。それによれば、天保7年(1836)の大飢饉の際に立ち上がり、米を買い占めていた悪徳商人に直談判したのが兵助だった。「義民」ということで顕彰されているわけだが、今で言えば市民運動を盛り上げたリーダーといったところか。興味がある人は「甲州一揆」「甲州騒動」などで検索すれば詳しいエピソードが出てくるはずだ。
江戸時代に、現代風の人権=生きる権利に命をかけた農民がいたという事実は大変興味深い。さらに面白いのは、兵助は結局、幕府の厳しい追求を受けて全国で逃避行を重ねたのだが、晩年になってこっそり犬目に帰ってきて今も子孫の方々が村にいるという事実だ。江戸の昔のおおらかさや歴史のロマンを感じる逸話ではないか。
「犬目」「鳥沢」「猿橋」「百蔵山」
次に、もう一つの犬スポット、「犬嶋神社」に向かう。ようやく出会った第1村人の男性に道を聞くと、「今から行くの? あそこの穴ぐらだよ」と、結構急な坂を数百メートル上がった先を指さす。「穴ぐら」というのは、本当の洞窟というわけではなく、木々が織りなすトンネルの先の、いわゆる「鎮守の森」の事のようだ。
日が沈みかけているが、「せっかく来たので」と意を決して坂を登っていく。途中、さすがは甲斐犬の本場、ということなのか。猟犬の檻がある家を何軒か見た。そのうちの一頭に激しく吠えられてしまったわけだが、家の人がしきりに犬をたしなめていた。不審者の僕の方が悪いんです。すみません……。