成績「下位4分の1」で、学生3万人弱に「警告」 修学支援新制度
2020年度から始まった、低所得世帯向けの修学支援新制度(新制度)の学業要件をめぐり、見直しを求める声があがっている。学業成績の平均が学部などでの「下位4分の1」に連続して入ると支援が止まる項目があるからだ。他人との比較で決まる相対評価のため、卒業できる成績であっても途中ではじき出され得る、「安心して学べない」仕組みとなっている。 【図解】 学生「私だけの努力じゃどうにもならない」の悲鳴 新制度は、大学や専門学校などに通う学生向けに、授業料の減免と、返還不要の給付型奨学金を出す。 住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯が対象で、支援継続には対象者側に学業要件があり、以下3点のいずれかに当てはまると「警告」となる。 (1)取得単位数の合計が標準単位数(卒業に必要な平均単位数)の6割以下(25年度から7割以下) (2)学業成績の平均(GPAなど)が学部などにおける下位4分の1の範囲 (3)授業への出席率が8割以下 2年連続で警告を受けると、2回目の警告理由が(2)のみの場合は、授業料減免と奨学金の支給が「停止」に、それ以外の場合は「廃止」になる。「停止」であれば復活可能。「停止」の区分は23年10月に導入され、それ以前は「廃止」だった。 文部科学省によると、廃止となった学生は23年度、全国で約1万人、停止は約9千人。22、21年度に廃止となった学生はともに約1万8千人。また、23年度末で警告を受けた学生は2万9983人(全体の11・7%)で、うち2万7732人が「下位4分の1」要件が理由だった。 滋賀県立大で学生たちの声を聞いてきた杉浦由香里准教授(教育行政史)は「素点平均が81点の学生でもGPA下位4分の1という理由で『警告』の対象になった。経済要件より成績要件が重視され、普通に卒業できる成績でも支給がストップする。非道だ」とし、「学ぶ権利を制約する下位4分の1要件は撤廃し、相対評価ではなく、絶対評価にすべきだ」と言う。 さらに「支給が止まると、授業料全額納付を迫られる。授業料減免と給付型奨学金を切り離すべきだ」と見直しを提案する。(編集委員・山下知子)
朝日新聞社