「五輪採用でブレイキンのレベルは驚くほど上がってます!」シゲキックス(Shigekix)の姉・半井彩弥が語る“商社に勤務”しながらパリを目指した日々【全2回のうち第2回】
第1回【実姉が明かす、ブレイキン代表「シゲキックス」を育てた“文武両道”の教育方針 「幼い頃の弟のあだ名は“小さいおじさん”でした」】からの続き 【写真】ブレイキン日本代表・シゲキックスと姉・彩弥さんのこれまでの軌跡 パリ五輪はいよいよ佳境を迎えようとしている。大会の最終盤に行われ、メダル争いに注目が集まっているのが、パリ五輪で初開催される新競技の「ブレイキン」だ。 開会式では日本選手団の旗手をシゲキックスこと半井重幸選手が務めたことでも話題になった新競技の魅力を、シゲキックス選手の姉で、自身もブレイキンダンサーの半井彩弥(ダンサー名:AYANE)選手に聞いた(全2回の第2回)。(白鳥純一/ライター)
代表になり変わったブレイキンの姿 「オフィシャルになった感覚がある」
五輪の正式種目に採用され、パリで初の五輪チャンピオンが決まるブレイキンだが、大会が近づくにつれて競技を取り巻く環境にはさまざまな変化があった。 「今までもカルチャーの中で日本予選があり、勝ち抜いた先にある大きな大会に“日本代表”として出場することはありましたが、五輪種目に採用されてからは、それがより“オフィシャル”なものになった感覚があります。私自身も日の丸が入ったウェアーに袖を通して、トップアスリートしか足を踏み入れられないような施設に行かせてもらう機会も増え、より気持ちが引き締まりましたし、これまで以上に責任のある行動を心がけるようになりました」(半井彩弥選手、以下同) 2019年全日本選手権の初代王女王で、今年も福島あゆみ選手に次ぐ2位の成績を収めた半井選手は近年ブレイキンの界隈で起こった変化をこのように語る。 彩弥選手自身は、残念ながら五輪代表の座を掴めなかったものの、日本代表チームの合宿に帯同し、「パリに向けて一緒に頑張ってきた選手たちに最後まで走り切ってほしい」という使命を持って、SNSなどで競技や選手に関する情報を積極的に発信している。
五輪種目の採用とともに生まれた葛藤
パリ五輪における「ブレイキン」は、選手同士の1対1のバトル形式で行われ、DJの音楽に合わせて披露された踊りを、9人の審判が「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」で評価する。 彩弥選手は「これまで先輩方が積み上げてきたものが、多くの人に目を向けていただけるようになったことへの感謝の気持ちが大きい」と五輪種目として行われる競技への思いを語るが、採用が決まった当初は、磨き上げた個性を競い合う競技の特性などからさまざまな戸惑いがあったという。 「最近は勝つために踊ることより、自分のダンスを通して何か伝えられたらなという思いの方が強い。私の踊りを見て、自分を表現することの素晴らしさを感じてくれたら嬉しいです」 今年2月に行われた全日本選手権(NHKホール)で2位になった半井彩弥選手は、試合後の会見でこのように語った。 「ブレイキンの選手が五輪に出られることが決まってから、私の『絶対に五輪の舞台に立ちたい』という思いは日に日に強くなっていきました。五輪に出場するにはもちろん試合に勝つ必要があるんですけど、なかなか自分のダンスを評価してもらえないことがあって。試合後に『どうすれば勝てるダンスが出来るのか?』を必死に考えてみるんですけど、まずは自分らしく戦えないと選手としての強さにも繋がりませんし、もし仮に普段やらないような動きで勝てたとしても、まったく達成感がない。勝つための絶対的な方法がない中で、自分のダンスと向き合わなければならない日々が辛くて、時に気持ちが入らないようなこともありました」 自分のダンスに対してネガティブになってしまう気持ちや、別のスタイルで得点を伸ばしていく他のB-GIRLを傍目に眺めながら思い悩む彩弥選手が導き出した答えは、“自身のダンスを突き詰めること”だったという。 「ある時にみんなが違う勝ち方をしているからこそ、自分のダンススタイルに磨きをかけていけばいいと気付かされて。好きな動きにオリジナリティを加えたりして、自分のダンスを最大限に見せることに集中できるようになりました」