「五輪採用でブレイキンのレベルは驚くほど上がってます!」シゲキックス(Shigekix)の姉・半井彩弥が語る“商社に勤務”しながらパリを目指した日々【全2回のうち第2回】
“ブレイキン大国日本”に起きた変化「若い選手が本気で五輪を目指すようになった」
現在はブレイキンの選手として世界各地の大会で活躍する傍ら、海外雑貨を取り扱う商社に勤務し、SNSの運用などを任されている。 大学生の頃は「今のシゲキックスのような感じで、スポンサー契約を結んでプロダンサーとして活動していく姿を理想としていた」というが、大会で一定以上の成績を収めていてもダンスに対する注目はあまり高いとは言えない当時の状況に直面しながら、卒業後もどうすれば競技と生活を両立させられるのかを真剣に悩むこともあったという。だがさまざまな縁によって入社に至った商社は在籍4年目を迎え、取引先や会社の同僚方の応援が心の支えになっている。 「会社に勤めてからの方が、ダンスに本気で向き合えているような感覚がありますし、応援してくださる皆さんのために全力で頑張らないといけないと思えるようになった。仕事とダンスの切り替えも上手に出来ているように感じています」 多くの人の期待や思いを背負いながら「さらに自身の表現に磨きをかけたい」と意気込む彩弥選手だが、五輪種目に採用が決まったここ数年で、ブレイキンの競技環境は大きく変化した。 「近年のブレイキンは、競技レベルが驚くほど上がりました。今までただ楽しく踊っていただけの人が、本気になって自国の代表や五輪を目指すようになりましたし、“五輪ムーブメント”のおかげで若い世代がとても増えてきていて、ぐんぐんと実力を伸ばしてきている。特に日本の女子はその傾向が強いように思います。私も若手から中堅と言われるような世代に突入しつつありますが、凄まじい勢いで成長している下の世代に負けないように、これからも自分自身を常にブラッシュアップさせていかないといけないですし、そのような環境がさらに自分を強くしてくれるんじゃないかと思っています」 パリ五輪唯一の新種目となるブレイキンは、日本時間の9日と10日の未明にパリのコンコルド広場で開催される。 「さまざまな形でブレイキンを知り、踊りを見て下さった方が勇気づけられたり、その方のその後の人生が楽しくなってくれたら嬉しいですし、そうなってほしい。ブレイキンは本当に素敵なカルチャーだと私は思っているので、パリ五輪を通過点にさらに上り調子でこの素敵なシーンがもっと大きく広がってくれたら嬉しい」と今後について期待を寄せる競技は、4年後のロサンゼルス五輪では実施は見送られたものの、パリでの熱闘をきっかけにさまざまな才能が芽吹いていくことになるだろう。 17世紀の初めから18世紀の半ばにかけて、フランスのヴェルサイユ宮殿からバロックダンスが流行し、ヨーロッパに広がっていったという。それから約420年の月日が流れた花の都パリで、ニューヨークのストリート生まれのダンスが新たな形で歴史を築き上げていくのかもしれない。 第1回【実姉が明かす、ブレイキン代表「シゲキックス」を育てた“文武両道”の教育方針 「幼い頃の弟のあだ名は“小さいおじさん”でした」】では、ブレイキン日本代表・シゲキックスこと半井重幸選手の半生を、姉でブレイキンダンサーの彩弥さんが語る。 白鳥純一(しらとり・じゅんいち) 1983年東京都生まれ。スポーツとエンタメのジャンルを中心にインタビューやコラム記事の執筆を続けている。 デイリー新潮編集部
新潮社