生活保護が高齢外国人に渡ることに… 年金制度を食い散らかす外国人の「脱退一時金」とは
悪質なスキーム
さらに脱退一時金の前提を根底から覆す、悪質なスキームも存在する。 脱退一時金の対象は、あくまで「帰国」する外国人。従って、繰り返し受給させるにせよ、日本から出国することは最低限必要な条件であるはずだった。 ところが、 「ここまで脱退一時金の申請条件が単純出国に限られていないという問題点を説明してきましたが、実のところ、審査にあたっては『本当に出国したか』すら確認していないのです」 すでに脱退一時金が「ザル法」であることに異論を差し挟む余地はなかろうが、出国したかどうかの確認もしていないとは、一体どういうことなのか。 「脱退一時金は確かに出国が条件になっていますが、申請時に必要な『出国』を証明するための書類には自治体からの『転出届』が代用されているのです。つまり単なる隣町への引越しでも、転出する自治体に『出国』として届け出れば脱退一時金を申請できてしまう。本当に出国するか担当者が空港に随行するわけでなし、厚労省と入管が連携しているわけでもないので、このような届け出をしてもほとんど発覚することはありません。これを悪用すれば、例えば異なる自治体にある複数の業者が結託して、一方が解雇した外国人労働者をもう一方が雇用するということを繰り返し、定期的に脱退一時金を申請し続けることもできてしまうわけです」
年金をもらえない高齢外国人の問題
しかし、ここである疑問が湧きあがる。 先ほども指摘した通り、脱退一時金は外国人労働者がそれまで納めてきた年金保険料が返戻されるだけ。脱退一時金を申請すればその間の年金受給資格は喪失するため、帰国せずに申請しようが、繰り返し申請しようが、日本の年金財源にマイナスの影響が生じるわけではないのである。 もちろん、脱退一時金を繰り返し申請する外国人就労者は、将来、無年金となってしまう可能性が高いが、それはしょせん、自己責任。放っておけばよいとも思えてしまう。 だが小坪氏によれば、この「無年金の外国人」こそ、脱退一時金の一番の弊害なのだという。 「例えば永住資格を有する外国人が繰り返し脱退一時金を申請してきた場合、一部の例外を除き、年金保険料の納付期間が10年に満たなければ65歳を過ぎても年金を受給することができません。仮に10年間だけ保険料を納めて受給資格を得たとしても、最低限の年金額では到底、生活はままなりません。そうして無年金や低年金になってしまった高齢の永住外国人が、生活に困窮して生活保護を受給せざるを得なくなるケースが後を絶たないのです」