生活保護が高齢外国人に渡ることに… 年金制度を食い散らかす外国人の「脱退一時金」とは
何度でも脱退一時金を申請できてしまう
だったら脱退一時金の受給資格を単純出国の外国人に限ればよいのではないか。解決策は素人目にも明らかな気がするが、そこには「縦割り行政」という霞が関のあしき慣習が立ちはだかる。 「脱退一時金は年金と同じく厚労省の管轄ですが、入出国については法務省の外局である出入国在留管理庁が所管しています。つまり、厚労省には出国を予定している外国人が脱退一時金の申請をしたところで、それが『単純出国』なのか『一時的な帰国』なのかを知るすべがないのです」 所管が異なるとの理由だけで「出国形態が問われない」という抜け穴が放置されてきたことにはあぜんとするばかりだが、驚くべきはこれだけではない。 「脱退一時金を申請すれば年金の被保険者資格は喪失し、年金番号も削除されます。従って、仮にその外国人が再び日本に入国して働き始めても、付与されるのは新しい年金番号になる。新旧の資格はひもづいているわけではありませんから、厚労省は新たな資格を取得した外国人労働者が脱退一時金を過去に申請したことがあるかどうかも分かりません。国は脱退一時金を申請した外国人が再び日本で働くなどという事態を想定していなかったのでしょうが、現状では帰国と再入国を繰り返すことで、何度でも脱退一時金を申請できてしまうのです」
日本人の側にも思惑
ここまでくれば賦課方式の皆年金は、必要なときに取り崩せる定期預金と変わりがなくなってしまう。資金繰りに窮した外国人は、短期間、母国に帰るだけでまとまった金銭を手にできてしまうのだ。 もっとも、われわれ日本人ですら簡単には理解できない複雑怪奇な年金制度。日本で数年働いた程度の外国人が自力で「抜け穴」に気付き、煩雑な申請をこなせるとは到底思えない。 そう、この異常な運用の背景には、制度をうまく利用しようとする日本人の“思惑”が見え隠れするのだ。 「外国人が脱退一時金を申請する際、社会保険労務士などが手続きを代行していることが多く、ネットで検索すればいくつもweb広告がヒットします。もちろん脱退一時金は単純出国する外国人にとっては正当な権利ですし、社労士など士業の先生方にとっても正当な業務であることは間違いありません。ただ、中には、外国人労働者を受け入れる雇用主と結託して、脱退一時金を『退職金』や『ボーナス』の感覚で申請させているケースも少なくないのです。実際、外国人を雇用する際に脱退一時金の受給を謳い文句にする業者も散見されますから」 前述の通り、日本で5年間も働けば脱退一時金の総額は100万円を優に超えることも少なくない。極端な話、数年ごとに外国人労働者に「一時帰国」させることを繰り返せば、雇用主は自らの懐を痛めることなく、まとまった金額を「ボーナス」であるかのように支給することができてしまうのだ。