サウナではどこに座るべき?自宅でできる「究極の入浴術」は? お風呂のプロが解説する、最強の入浴方法
余計に疲れてしまうことも
適応症を吟味するよりも簡単な、どの温泉を選べばよいかの基準として覚えておくべきは「刺激」です。含鉄泉や硫黄泉のように、文字通り鉄や硫黄を含んだ泉質は刺激が強い。10の療養泉を分類すると(1)から(5)まではマイルドで「弱刺激」、(6)から(10)まではやや「強刺激」となります。 従って、体力があり余っている若い人などは、(6)から(10)の療養泉の刺激によってリフレッシュすることができます。一方で病気明けの人や、極度に疲労がたまっている人、また体力が落ちている高齢者は、温泉に漬かってゆっくり休もうと思って(6)から(10)の療養泉を選んだら、強い刺激によってなんだか余計に疲れてしまったという事態が起きかねません。 ですので、体調が万全ではなく、どの温泉にしようかと少しでも迷った場合は、(1)から(5)の療養泉を選択したほうが無難でしょう。
総合的生体調整作用
また、温泉の活用の仕方として、環境省は「新・湯治」を後押ししています。これは「温泉そのもの」だけではなく、温泉を含む「温泉地の環境全体」を楽しむという概念です。温泉のお湯に身をひたすことだけが温泉の効能であると誤解されがちです。しかし、温泉地の景色をゆっくり眺めながらボーッとしたり、のんびりと散策したりしてその土地の文化を味わうことも、リラックス効果などを含めた健康効果をもたらしてくれるのです。 これを医学的には温泉の「総合的生体調整作用」と呼びます。温泉水を自宅の浴槽に完全に再現したと想像してみてください。その「即席自宅温泉」に漬かれば温泉地になど行かなくてもOK――とは、みなさん思わないのではないでしょうか。やはり、「温泉地」の環境があってこそ温泉そのものの効能も増す。実際、数日以上温泉地に滞在すると、ホルモン値や血圧などが正常化するという研究報告もあります。
全国平均の10倍の温泉入浴回数
ここまで、「温泉」の選び方や「温泉地」の効能について説明してきましたが、温泉をさらに効果的に活用するにあたっては、温泉“大国”ニッポンの中でも、とりわけ温泉“大県”の人たちの行動にヒントが隠されているはずです。 源泉数、湧出量ともにナンバーワンの大分県。湯布院や別府といった日本有数の温泉地を誇る同県は、世界一の温泉天国と言っても過言ではないでしょう。例えば東京に住んでいると、日常的に温泉に入れる環境にはありません。しかし、大分の人は身近にいくつもの温泉地が存在する。彼らの「温泉行動」には学ぶべきものが多いのではないか。そこで2018年、私たちの研究チームは大分の県庁職員1182人を対象に大規模な調査を実施しました。 その結果、まずやはり大分の人は温泉入浴回数が多く、全国平均の10倍に達していました。月1回以上温泉に入っている人は実に過半数の55.6%、ほぼ毎日温泉に入浴している人も4.0%いました。