独VWが強制労働疑惑の新疆工場を売却、上海汽車との提携は延長
ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)と中国の合弁パートナーは11月27日、新疆ウイグル自治区の組立工場を上海市政府が所有する企業に売却したと発表した。VWは、この地域での強制労働の疑惑をめぐり長年にわたって人権団体や西側の議員から批判を受けてきた。 VWは、同社の上海汽車(SAIC)との合弁会社が、新疆ウイグル自治区のウルムチにある工場と2つのテストコースを「経済的理由」により売却したと発表し、この動きが「戦略的再編」の一環だと説明した。 同社は、この資産を上海自動車検査センター(SMVIC)に売却したが、取引の財務条件を明かしていない。SAICとSMVICの両社は上海市政府が所有している。 VWは声明で、新疆における強制労働や人権侵害に関する懸念には触れず、SAICとの提携を2040年まで延長することで合意したと述べた。同社はまた、2026年までに「新世代の電動車両」を中国市場に導入する計画を明らかにした。 VWのこの売却は、西側の人権団体や議員からの人権侵害や強制労働疑惑をめぐる数年にわたる批判を受けた後に行われた。中国政府は、これらの疑惑を強く否定している。 VWは、2022年にモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)によるESG(環境・社会・ガバナンス)指標の評価で「レッドフラグ」評価を受けており、一部のESG投資家は、同社をポートフォリオから外していた。VWは、昨年12月に公表した新疆工場での労働慣行に関する監査結果で、「強制労働の証拠は見つからなかった」と述べていた。 しかし、米国の税関当局は2月に、数千台のポルシェやベントレー、アウディなどのVW傘下の高級ブランドの車両が、中国で強制労働によって製造された電子部品を含んでいるとして輸入を禁止した。 米国、英国、カナダ、EUは近年、新疆地域での人権侵害に関与または加担したとする中国企業や当局者に制裁を課してきた。中国政府は、主にイスラム教徒であるウイグル人の少数民族を収容所に拘束していると報じられており、施設内で拷問や強制労働、性的虐待が行われていることが、流出した文書や衛星画像を通じて明らかになっている。 これに対し、中国政府はこれらの疑惑に反論し、人権問題を理由に地域から撤退しようとする外国企業を標的にする動きを見せている。 2021年には、中国国営メディアが、新疆産の綿を調達しない決定を下したナイキやH&M、アディダス、バーバリーなどのファッションブランドを攻撃するキャンペーンを展開した。一方、中国国営メディアのグローバル・タイムズは、今年2月の論説記事で「VWが西側からの圧力にもかかわらず、新疆に工場を建設するという勇気ある決断を下したのは、この地域が世界のサプライチェーンに必須のものだからだ」と主張していた。
Siladitya Ray