衆院選大敗も石破首相は続投の意向:選挙後DAY1(初日)の金融市場は予想外の円安・株高に
金融市場は米大統領選挙の影響も大きく受ける
選挙後DAY1の予想外の市場の反応については、以上のような解釈が一応可能ではあるが、政治情勢が混迷を極める中、早晩、金融市場はリスクオフの円高・株安に振れる可能性があるのではないか。他方、国内金融市場は11月5日の米国大統領選挙の影響も受けやすいことから、衆院選挙の影響のみ抽出するのは難しくなっていく可能性もあるだろう。 政治情勢の不安定化や金融緩和継続を望む野党が与党の政策に与える影響が高まる中で、選挙結果によって日本銀行の追加利上げの時期は先送りされる可能性が高まったと見る。 ただし、米国要因で円安が進む場合には、それは日本銀行の追加利上げを後押しするだろう。ドル円レートが1ドル155円を超えて円安が進めば、政府は物価への悪影響に配慮して、ドル売り円買いの為替介入を実施する可能性が出てくる。その場合、石破政権は、円安阻止に向けて日本銀行に政府との協調を求め、日本銀行に対して一転して追加利上げを求める可能性があるだろう。米大統領選挙後に円安が大きく進む場合、日本銀行は今年12月に追加利上げを実施する可能性が出てくると考えられる。ただし、それは代替シナリオであり、標準シナリオとしては来年1月の追加利上げを引き続き見ておきたい。
石破首相は記者会見で続投の考えを示す
衆院選を終えたことを受け、石破首相は10月28日の午後2時から記者会見を開いた。冒頭での説明は、自民党の選挙公約の繰り返しに終始した感がある。そのうえで、厳しい選挙結果を与党に対する政策を前に進めよとの国民の声と捉え、政治とカネの問題の抜本改革、物価高対策、地方創生を進める考えを示した。 記者からは、小泉選挙対策委員長が選挙での自民党大敗の責任をとって辞任を決めたことを受け、首相、幹事長など執行部が責任をとる考えがあるかについて質問があったが、石破首相は、「選挙結果を謙虚に受けとめるが、厳しい経済、国際情勢で国政の停滞は許されない」とし、「国政を進めていくことで職責を果たす」として自らの辞任を否定した。 また、野党との連立あるいは連携の可能性について問われると、「現時点で連立を想定している訳ではない」としたうえで、議席を大きく伸ばした野党の主張のどれが国民に評価されたかを分析し、その優れた政策を与党も取り入れていくとした。そのうえで、野党とよく政策を協議し、信頼関係を築いた上で、連立あるいは連携を協議していくとの考えを示した。 このことは、野党との連立、連携を進める中で、その政策を与党がかなり受け入れる覚悟があることを示唆している。その結果、今後の経済政策については不確実性が大きく高まっており、それが金融市場の不安定化につながるものとなるだろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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