使ってみて分かった!アップルの新型端末「ビジョン・プロ」の可能性と乗り越えるべき課題
6月下旬に日本で発売された米アップルのゴーグル型端末「Vision Pro(ビジョン・プロ)」。昨年6月の開発者向けイベントで披露され、米国で今年2月に発売された。アップルは、ビジョン・プロをデジタルコンテンツと現実世界を融合させた「空間コンピューター」と定義している。3次元(3D)のインターフェースを持ち、視線、手ぶり、声で操作する。 【写真】ビジョン・プロを日本で発売 アップルのゴーグル型端末
外国為替市場の円安ドル高の影響もあり、日本での販売価格は約60万円からと超高級品だ。来日した製品マーケティング担当のボブ・ボーチャーズ副社長は共同通信の取材に「ユーザーは今後、生活や旅行、仕事の中で、いろいろな形で活用してくれるだろう」と語った。ビジョン・プロを2週間ほど自宅と職場で試し、その将来性と課題を考えた。(共同通信=吉無田修) ▽高級な外観、ずっしりとした重み 大きな箱を開封すると、ガラス製のグラス部分を保護するカバーが付けられていた。7万円台からの米メタのゴーグル端末「クエスト3」のプラスチック製の外観と比べて高級感がある。ボディは黒、グレー、白を基調とし、アップルらしい洗練されたデザインだ。一方で、ずっしりとした重さが気になった。端末部分は600グラム以上、ポケットに入れる付属バッテリーが300グラム以上あり、合わせると1キロ近くになる。バッテリー内蔵のクエスト3は500グラム程度にとどまる。
装着に使用するバンドは、後頭部で締める蛇腹状のタイプと、頭頂部と後頭部で固定するタイプの2種類が付属している。見栄えは蛇腹状バンドの方が良いが、ずり下がらないようにきつく締める必要があり、30分ほど使用すると額に赤い跡が残った。私の妻は15分ほどで痛みに耐えられなくなり、2点で支えるタイプに変えた。 ▽「魔法使いみたい」没入感に感動 装着すると、周囲の空間が高解像度で映し出される。端末上部にあるダイヤルを回せば、自分の周囲がハワイのハレアカラ火山や月面などに徐々に切り替わる。視線を向けたアプリが浮き上がり、人さし指と親指のタップで選択する。つまみながら縦や横に動かすことでスクロールでき、両手で引き伸ばす手ぶりで拡大する。高校1年生の娘は「すごい、魔法使いみたい」と歓声を上げた。 ビジョン・プロ搭載のカメラは3D映像を撮影できる。飼い犬のヨークシャーテリア、ルーカスの3D動画を見ると、目の前にルーカスが座っているような錯覚を感じた。こうした思い出の映像は宝物になりそうだ。iPhoneで撮影した写真はビジョン・プロでも見ることができ、パノラマ写真は、その中に入り込んだように感じた。旅先などで撮影した写真がビジョン・プロによって新たな価値を生む。この没入感は、平面の動画や写真とは別次元の懐かしさをかき立てる。