43年のロングセラーとなったSRの歴史は、エイプリルフールの企画から始まった?
フューエルインジェクション化と、SRブームの終焉
スポーツバイクとしては前時代的になってしまったSRだが、ドラムブレーキ化されてからカスタムの素材としての注目度が上がり売り上げを伸ばしいくことになる。そして1990年代に入ると、先述した「SRブーム」の到来によって黄金期とも言える時代を築くことになった。2000年にSR500は生産中止となったが、SR400は大きなモデルチェンジをすることなく年次変更を重ねつつ生産が続けられた。この間の主な変更点としては2001年にフロントブレーキがディスク化されたことであり、これは保安基準の強化に対応するためであった。大きな転機が訪れたのは2008年で、排気ガス規制の強化によりSRは一度ラインナップから姿を消すこことなった。「これでSRも終わりか」という噂も流れたが、翌2009年の東京モーターショーでフューエルインジェクション化された新型が発表された。心配されたフューエルインジェクション化によるデザインへの影響はほとんどなく、SRはSRらしさを保ったまま新しいフェーズへと突入した。撮影車は2016年式なので、この2009年に始まるフューエルインジェクションの前期モデルだ。フューエルインジェクション化は時代の流れであり、SRというバイクを作り続けるためには必要な選択であった。しかし、カスタムユーザーは手を入れにくいフューエルインジェクションモデルを歓迎せず、ショップが牽引してきたSRブームは徐々に下火になっていった。
2度の排気ガス規制に対応し、2021年まで生産されたSR
大きなブームは去ったものの、扱いやすくなったフューエルインジェクションモデルはベーシックなバイクとしての人気を保ち続け、再度排出ガス規制が強化された2016年まで生産が続けられた。さすがにこれで完全生産中止となるかと思われたSRだったが、ヤマハは2018年に排出ガス規制に対応させた新型SRを投入したのである。このフューエルインジェクション後期モデルは、チャコールキャニスターの装備やO2フィードバック制御の精度向上による排出ガスの浄化、音質や歯切れの良さを向上させた新型マフラーを装備していた。しかし、このューエルインジェクション後期モデルは「二輪車令和2年排出ガス規制」には適合しておらず、2021年10月以降にABSが義務化されるということもあり、それら全てに対応するためには再び大きく手をいれる必要が出てきてしまった。ヤマハはここでSRを生産中止にするという決断をし、2021年の1月に発表された「SR400 Final Edition Limited/SR400 Final Edition」をもって43年の歴史に幕を下ろしたのである。
SR400主要諸元(2016)
・全長×全幅×全高:2085×750×1110mm ・ホイールベース:1410mm ・シート高:790mm ・車重:174kg ・エジンン:空冷4ストローク単筒SOHC2バルブ 399cc ・最高出力:26PS/6500rpm ・最大トルク:2.9㎏m/5500rpm ・燃料タンク容量:12L ・変速機:5段リターン ・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム ・タイヤ:F=90/100-18、R=110/90-18 ・価格:51万円(税抜当時価格)
後藤秀之