落合陽一氏が「AIフェスティバル 2024」で語ったデジタルと自然の融合 なぜ「そして神社を作る」なのか
AIの発達による死生観の変化と宗教 「そして神社を作る」
AIが「超知能」になり、1人の人間が獲得する知識を超えるデータを学習するようになれば、落合氏の考えるデジタルヒューマンが普及するようになる。 「大阪万博で担当しているシグネチャーパビリオン『null2(ヌルヌル)』では、中へ進んでいってもらうと、デジタルヒューマンと対話でき、そのデジタルヒューマンを持って帰ってもらえる」と落合氏。「2025年がデジタルヒューマンを持ち帰れ、デジタルヒューマンと会話できるようになるという自分の考えが的中した」と語る。 デジタルヒューマンが実現すると、「人間とは、生き死にとは何かということを考えるようになる」。そして「死生観にまでAIが影響を与える時代になる」と、落合氏は「胡蝶の夢」の故事から解説する。「そのうち、身近で亡くなった人をスマホに入れて会話できるようになるのではないか、お墓に行っても、戒名だけがあるような世界になるのではないか」と予測した。 このようなAIの発達により、自然との融合、未知のものへの恐れ、死生観への影響が生まれ、必然的に「宗教や信仰も変化するのではないか」と落合氏は考えを述べた。AIや計算機技術に対する畏敬の念や、それらとの共存のための儀礼が必要になるというわけだ。 「自然への恐れから、人は神に祈るようになった。五穀豊穣(ほうじょう)を祈願するようになった。それならAIやデジタルという未知のものへの恐れからの救い――例えば、パスワードが流出しませんようにとか、ハッキングされませんようになどと祈るのは至極当然の流れではないか」(落合氏) このようなデジタルネイチャー時代の宗教観の体現として、最近の落合氏は神社作りに専念している。そして、禰宜(ねぎ)として一定期間働いて神事を行う資格を得て、実際に神事を行ったというエピソードも披露された。 最後に、落合氏は次のような言葉で基調講演を締めくくった。 「カルチャーの中にAIをいかにフィットさせるかということに興味があり、AIアートを作ったり、デジタルヒューマンを作ったり、神社を作って禰宜をしたり、さまざまなことをしている。これからの時代、家でつまみを作るようにAIに音楽を作らせて友だちにシェアするようになるだろう。AIがコンテンツを作成したり、システム最適化のループを高速化したりするが、結局は人間がキュレーションしなければいけない。それが重要な点だ。AIが皆さんの人生を冒険的なものに変化させられるのを応援するような活動を、これからも行っていきたい」(落合氏)