羽生結弦が能登半島地震復興支援チャリティー演技会に込めた想い 満ちあふれていた力強さ
そして、羽生結弦は『春よ、来い』を披露。今回、会場は通常のリンクをそのまま使用しており、アイスショー仕様の照明ではなく、練習をしている時と変わらない明るさで開催された。その理由を羽生はこう説明する。 「チャリティーなのでなるべく多くの寄付をしたいということがあって、(会場の設営などに費用をかけず)規模を小さくすることが第一の目標としてありました。制作資金を削減していくにあたって、最終的にリンクも(特別な追加の)照明はなしということになりました」 リンクの普段の照明のままで滑った『春よ、来い』は、計算されたスポットライトがあたるアイスショーとはまた違う印象を与えるものだった。 「どんな時でもやっぱり思いをひたすら込めて滑っていますし、僕らは練習している時はこういう照明なので、そこに対しての気持ちの変化はなかったかもしれないですけど、いつも(アイスショーを)見てくださっている方々には、いつもと違った感覚を感じていただけたら嬉しいです。僕ら自身もチャリティーのための演技ということで、気持ちも全然違いました。プログラムに込める思いたちも、より明確に『能登地方の方々へ』という気持ちで滑りました」と羽生は話す。 4人でのフィナーレは、Mrs. GREEN APPLEの『ケセラセラ』。この曲について、羽生はこう語った。 「僕自身Mrs. GREEN APPLEさんが本当に好きで。この曲自体が持っている、沖縄風になっちゃうかもしれないですけど、『なんくるないさ精神』というか、『どんなことがあっても自分に言い聞かせながら前を向いていくんだ』という気持ちを鈴木明子さんの振り付けで表現したつもりです。ボーカルもそうですし、楽曲のひとつ一つの音をすごく大切にしながら、みんなが希望を胸に滑ったなと感じています」 配信という形式をとった今回の演技会は、石川県以外の他の地域の会場で滑ることも可能だったが、羽生は石川県内での開催にこだわった。 「辛かった方々、今現在辛いと思っている方々、いろんなことで悩んでいる方々の近くで滑りたいと思いました。その地域の力みたいなものや、その現場の空気みたいなものを僕たちは感じながら滑るので、その空気を大切に。そして少しでもこの場所からなんらかの波動として、ちょっとでも空気が動いて地元の皆さんの元に届いてほしいと思いながら滑らせていただきました」 羽生は、6月には能登の被災地を訪れていた。 「ニュース画面や紙面でその現状などを見る機会はありましたけど、実際に生で見た時の『こんなにもこのまま残ってしまっているんだ』という、傷跡の生々しさにはとても衝撃を受けました。何か時が止まっているというか......。地元の方々が『ここでこんなことがあったんだということをいまだに思い返してしまうので、ここに来たくない』と話しているのを聞いて、すごく胸に刺さるものが、痛むものがありました」