宿泊キャンセル多数…消えゆく北アルプスの雪渓、地元に衝撃 急速に進む気候変動で少ない雪は当たり前に 安全や水の確保に懸念
急速に雪が溶ける北アルプスの雪渓
北アルプスの雪渓がどんどん解けている。特に昨年と今年は2年続けて春から夏にかけての融雪が急速に進み、登山道となる雪渓にクレバス(割れ目)が生じたり、山小屋の水源となる雪渓が早くに消えたりする影響が相次いでいる。ここ5、6年をみても、春の小屋開けで入山した山小屋関係者から残雪の少なさを聞くことが増えている。山岳域にどのくらいの雪が降り、どんな解け方をしているのかについては詳しいデータがないのが実情だ。気候変動の影響が山岳域にも広がる中、基礎データの収集が求められている。 【写真】2017年と2024年を比較した北アルプスの残雪状況。山小屋の姿がはっきり見えるほど雪が少ないのが分かる
白馬大雪渓は夏山本番前に通行止め
北ア北部の白馬岳(2932メートル)への主要ルートとなる白馬大雪渓について、地元の北安曇郡白馬村は7月4日から通行止めにした。いくつものクレバスが生じるなどして一般登山者の通行は危険と判断したためだ。 山頂直下にある白馬山荘などを経営する白馬館(白馬村)の社長・松沢貞一さん(72)は、「1906年の山荘開設から約120年で、夏のシーズン初めの通行止めは異例」と話す。雪解けが進んで8月27日から通行止めになった昨年も「これまでに例のない早さ」と言われたが、今年は夏山(7、8月)の入り込みが始まる前の通行止めとなった。山小屋には宿泊予約のキャンセルが数多く寄せられたほか、今後の影響も予想されることから、地元の観光関係者には衝撃となっている。
登山者からも驚きの声「いつまでもつか…」
その兆候は春の段階から現れていた。5月下旬に大雪渓を登った登山者からは、大雪渓の雪が例年より少ないこと、クレバスの発生が早いことに驚きの声が聞かれた。雪解けの早まりに伴い、稜線(りょうせん)ではツクモグサなどの高山植物の開花が2週間ほども前倒し。こうした状況も踏まえて、松沢社長は「大雪渓がいつまでもつだろうか」と不安を感じていたという。
山小屋関係者「新たなルートの検討必要かも」
予期せぬ2年続きの早期の通行止めを受けて、松沢社長は「大雪渓沿いの中で、雪渓の影響を受けにくい新たなルートの検討が必要かもしれない」と指摘。今後を展望するためにも、「山岳域の降雪、融雪状況が分かる情報があればありがたい」と話している。