宿泊キャンセル多数…消えゆく北アルプスの雪渓、地元に衝撃 急速に進む気候変動で少ない雪は当たり前に 安全や水の確保に懸念
国は「降雪限定の対応、すぐには難しい」
国土交通省松本砂防事務所(松本市)によると、北アの管内で積雪計を設置しているのは上高地の徳沢、明神池と焼岳(いずれも松本市)、猿倉(白馬村)の計4カ所。上空からのレーザー観測は土砂の移動を調べるのが主な目的で、多くても年に1回ほどの観測に限られるという。中田圭一副所長は「温暖化に伴う災害の激甚化には対応しているが、降雪に限定した対応はすぐには難しい」と話す。
動植物の生態調査にも基礎データは不可欠
通常状態の気象データが十分にそろう前に、気候変動の影響が急速に広がっているのが北アの現状だ。常念山脈では秋の降雪が遅くなり、ライチョウへの影響も懸念されているほか、中アの高山域での研究では温暖化によってコケの分布が大きく変わる恐れも指摘されている。動植物の生態を調べる上でも気象データは欠かせない。南極・昭和基地では基礎データとして上空のオゾン濃度の観測を続けてきた。これがオゾンホールの発見につながり、原因物質のフロンなどを世界的に使わない方向へと向かった。南極観測の経験もある鈴木所長はこうした点からも山岳域でのデータ収集の重要性を見据えている。