元町工場の意味は原点を大切にする「もと町工場」だった! エンジン車もハイブリッドもEVもFFも4WDも同じラインで生産する「現在より未来」を見据えた取り組みに感動
最少人数で生産ラインを効率化
また、驚かされたのは、工場における人員の少なさです。少人数での自動車生産を可能にするため、トラブルや疑問が発生した際にはもち場横のライトを点灯させてリーダーに知らせるシステムが採用されています。軽微なトラブルであれば黄色、緊急性が高い場合は赤色のランプが点灯し、信号と同様に見た目で状況の深刻度がすぐにわかる工夫がされています。こうした報告やフォローの体制が整っていることで、少人数でのライン運営が可能になっているそう。 さまざまな車種が同じラインを流れることで、部品の組み立てやパーツの管理に混乱が生じそうな印象もありましたが、そこにも工夫が凝らされています。担当者が部品を取りに来ると、必要な部品が収納されている棚が自動で点灯し、取り忘れや間違いを防ぐために部品を取った際にはボタンを押して電気を消す仕組みが採用されています。このような工夫により、ミスを防ぎつつ効率的な作業を実現しています。 さらに、元町工場では水素の活用も進められています。場内を巡回するのはFCEV(燃料電池車)バス「SORA」で、工場内の移動手段として活用されています。また、物資の移動には水素で動くフォークリフトが使われており、日本国内で最大の水素フォークリフトの導入台数を誇っています。工場内で使用する作業車両を水素燃料にすることで、CO2削減にも取り組めるメリットがあります。 さらに、水素フォークリフトには水素充填機が備わっており、充填時に排出される水を回収する仕組みが採用されています。これにより、工場の清潔さを保ちながら環境への配慮も実現。水素の充填時間はわずか3分程度と短く、待ち時間が少ないため、効率的に作業を行うことができる点も特徴です。 こうした新しい技術や取り組みを積み重ねることで、元町工場はいまなおトヨタの成長と環境への配慮をリードする重要な拠点として、その役割を果たし続けています。 以上のようなさまざまな工夫によって、トヨタ自動車の元町工場は、創業当時の精神を受け継ぎつつ、時代に応じた挑戦を続ける拠点となっています。同じ生産ライン上で9種類の車種を混流生産するという先進的なシステムを実践し、効率よりも技術革新と柔軟性を優先し、自動車産業の未来へ向けて進化を続けています。 また、水素を活用した車両の導入や充填時の排水回収システムなど、環境への配慮も徹底。こうした取り組みの積み重ねにより、元町工場はトヨタの成長と未来への貢献を象徴する存在として、その役割を果たし続けています。今後もこの姿勢を土台に、さらなる技術革新と環境への取り組みを通じて、未来のモビリティをリードするトヨタの活躍に期待が高まります。
黒木美珠