未翻訳本から読む世界|「テンセント」の歴史が示す中国企業の野心と呪縛|Lulu Chen『Influence Empire』
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2017年、中国の深圳に本社を置く テンセント(騰訊控股有限公司) は時価総額でフェイスブックを上回り、世界の5大企業の仲間入りを果たした。2022年時点で11億人を超えるユーザーを抱えるサービスであるWeChatを提供する同社は、中国の巨大テクノロジー企業を代表する存在である。 それでは、同社のCEOの名前と顔がすぐに思い浮かぶだろうか。同社の創業者であるポニー・マー(馬化騰)は、同じく中国巨大企業の代表であるアリババの創業者ジャック・マー(馬雲)に比べると、中国国外の人間にとっては謎めいた存在と言えるかもしれない。 本書『 Influence Empire: The Story of Tencent and China’s Tech Ambition 』(影響力の帝国:テンセントと中国テック企業の野望)は、ポニー・マーとテンセントの歴史を詳述するルポルタージュだ。著者のルル・チェンはブルームバーグ・ニュースで10年以上にわたり中国のテクノロジー企業を取材してきたジャーナリストである。テンセントとWeChatは市場での競争を通じてサービスを改善し、現在の地位を築いた。「テクノロジー・コングロマリット」としての同社の事業領域は多岐に渡り、アニメ、ゲームなどの IP(Intellectual Property:知的財産) の中国展開を狙って日本のコンテンツ企業とも資本業務提携を進めている。その一方で、中国政府との緊張関係を抜きに同社の歴史は語れない。本書の中心的な問いは「習近平の中国において成功する起業家とはどのようなものか?」という点にある。
本文:3,662文字
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植田かもめ