「残業削減」以上の収穫、名古屋市立日比津中の「働き方改善」の意外な効果 実際にやめた・減らした・変えた・充実させたこと
ちょっと立ち止まって、学校の当たり前を見つめ直す
日比津中では、そもそも何のための業務なのかを問い直し、個人の好き嫌いや価値観だけにとらわれすぎないことを重視した。 例えば、掃除の時間(清掃指導)は、さまざまな価値観や考え方がある。マナーとして必要最小限でよいという考え方もあれば、生徒の心を磨くうえでも大事だと考える教員もいる。 私などは、本来は自治体が予算を付けて外部委託したらよいと考えている。県庁や市役所では職員はトイレ掃除などしていないのに、なぜ、学校だけ教育的な意義を強調して、子どもと教職員にタダ働きさせるのか? 清掃は何のためなのか。教育的意義があるとしても、毎日実施する必要まであるのか。そんな観点での検討を進めた。日比津中学校では、サポートスタッフ(業務支援員)がコロナ禍からトイレ掃除などを支援してくれていることもあって、15分前後の大きめの清掃は週1回に減らして試行することにした。結果的には汚れがそうひどくなるわけでもなく、この方式で続けていけることになった。 念のために申し添えると、週1の清掃では汚れて大変という学校もあるだろうから、この事例がすべての学校で適用できるとは考えていない。注目してほしいのは、掃除などの毎日やっていて「当たり前」と思われていたことも含めて、聖域なく見つめ直したことだ。 日比津中では、清掃のほかにも、年度内に変えられることをやってみた。 例えば、生徒ノートというのは、生徒と担任との交換日記のようなかたちで、生徒は日々感じたことや、ちょっと悩んでいることをつづるものだ。これでSOSをキャッチできることもあるが、担任はコメント返しで毎日1時間くらい要することもあって、そうとうな負担ともなっていた。 生活ノートも教員間の意見が分かれるもので、日比津中でも賛否があったし、やめると保護者からクレームが来るのではないかといった心配の声もあった。だが、生徒のSOSはほかの手段でも把握できるし、必ずしも担任からの長いコメントが必要なわけではないので、簡素化してみることにした。 こうした取り組みの結果、日比津中では昨年度、平均の月当たり時間外勤務時間は半減し(同じ月で比較しているわけではないので厳密な検証ではないが)、時間外45時間以内の教員が8割以上となった。 何より、時短効果以上に、教職員も私も実感したのは「学校は変えていける」「自分たちの働き方は自分たちの力で変えていける」という教職員の手ごたえ、効力感ではないかと思う。当初「どうせ変わるわけがない」と冷ややかだった状態とは大違いだ。