退職金2,000万円、貯金2,500万円「64歳・勝ち組夫婦」…悠々自適な老後のはずが、妻「30年ぶりに働きに出ます」のワケ
配偶者の死去で高まる「老後不安」解消のために出来ることといえば
老後にまつわる「お金」がすべて平均だったら、なんとも明るい未来がみえてきます。しかし、人生、想定通りにいくとは限りません。 ――60代にして伯母が仕事を始めた。30年ぶりらしい そんな投稿をした30代の男性。伯母は結婚して以来専業主婦。ずっと夫を支えてきましたが、そんな夫は60歳で定年を迎えると、完全に仕事を辞めて隠居生活に。「貯蓄を取り崩しても、退職金があるから大丈夫」というのが、その理由です。定年後もなんとかなると仕事を完全に辞めるというのは、いまどきは「勝ち組」の思考。悠々自適な生活を送っていましたふたりでしたが、そんな生活も5年目を迎えたときに、同い年の夫は急逝し、終わりを迎えてしまったといいます。 65歳からもらえる年金額は? 仮に夫が65歳から受け取る年金額が平均的だったと仮定すると、伯母が受け取れる遺族年金は月7.4万円。自身が国民年金を満額受け取れると仮定すると、65歳から受け取れる年金額は月14.2万円程度となる計算です。 元々平均的な貯蓄があったとしたら1,200万~1,300万円程度は残っているはずですし、退職金も手つかずで残っている可能性が高いでしょう。1人暮らしであれば、十分な貯蓄のように思えます。 ちなみに夫婦共働きで、妻が厚生年金と遺族厚生年金を受ける権利がある場合、「遺族厚生年金>厚生年金」の場合、その差額を受けることができます。 「遺族厚生年金<厚生年金」の場合は、遺族厚生年金は全額支給停止になります。 高齢者の住まいの問題 ただ伯母が心配だというのが、30年前に新築で買ったというマンションの管理費・修繕積立金。厚生労働省『平成30年度マンション総合調査』によると、マンションの平均管理費は平均月々1万5,956円/戸あたり、修繕積立金は平均月々1万2,268円/戸、月々2万8,224円程度のランニングコストが発生します。さらに昨今のコスト高により、当初の予定額を大きく上回り、プラスαの負担を余儀なくされる例が後を絶たないといいます。また合意形成が難しく、修繕や建て替えがスムーズにいかないというケースも多いとか。 ――終の棲家と考えると、いま住んでいるマンションは不安…… そうなると、施設への入居もひとつの選択肢となります。昨今、介護を必要としない人でも入れる「自立型の介護施設」が人気を集めていますが、価格は高め。入居一時金は平均1,000万~3,000万円程度、月額利用料も20万~40万円程度とされています。 老後不安を打ち消すために「働く」という選択 収入を得る手段が限られる老後は、どんなにお金があろうと将来を不安視するもの。また昨今の物価高に、減り続ける年金、逆に増えるいわれる医療費等の社会保障費……老後の不安は大きくなるばかりです。さらに長年連れ添ったパートナーが亡くなれば、不安感はさらに増すに違いありません。 内閣府『社会意識に関する世論調査(令和5年11月調査)』によると、「経済的なゆとりと見通しが持てない」という回答は、全体で63.2%。女性に限定すると60代の58.5%、70代の53.8%と、過半数を超えています。 ――働きに出るのが一番の解決策 男性の伯母は、老後の不安から、働けるうちは働こうと、30年ぶりに仕事に出る決断をしました。昨今、仕事を始める/仕事を続ける高齢者が増えているのは、そんな老後不安の高まりによるものかもしれません。 [参考資料] 総務省『2023年度 家計調査 家計収支編』 内閣府『社会意識に関する世論調査(令和5年11月調査)』