シードル・ゴールドの屋根が輝く〈弘前れんが倉庫美術館〉と近辺の名建築【青森でアートを巡る旅へ】
青森県で開催中の「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」は県内5つの美術館とアートセンターが連携して行うアートフェス。アートを通じて青森のいろいろな顔に出合えます。 【フォトギャラリーを見る】 青森県で開かれている「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」では「つらなりのはらっぱ」を共通テーマに各館が独自にキュレーションした企画展を行う。参加しているのは〈青森県立美術館〉〈青森公立大学 国際芸術センター青森〉〈弘前れんが倉庫美術館〉〈八戸市美術館〉〈十和田市現代美術館〉の5館だ。一つの県に現代美術を主に扱う美術館が5つもあるのは珍しい。青森という地や歴史に対してアーティストがそれぞれ呼応したアートが楽しめる。〈弘前れんが倉庫美術館〉で開かれている2つの展覧会に出かけよう。
●2020年にオープンした〈弘前れんが倉庫美術館〉
〈弘前れんが倉庫美術館〉はシードル工場や倉庫として使われていた建物を、田根剛の改修設計で2020年にオープンした、比較的新しい美術館だ。晴れた日にはシードル・ゴールドと名づけられた金色の屋根が陽光を反射してきらめく。ここでは「つらなりのはらっぱ」のメイン企画として2つの展覧会が開かれている。
その一つ、『蜷川実花展 with EIM:儚くも煌めく境界 Where Humanity Meets Nature』は写真家・映画監督の蜷川実花と、データサイエンティストの宮田裕章、セットデザイナーのEnzo、クリエイティブディレクターの桑名功らのチーム「EiM」によるもの。展覧会タイトルには人の手によって育まれたもの、人の生活とともにあるもの、人と動物との共存などの意味合いが込められている。
たとえば弘前名物の桜は人の手によって大切に守られ、育てられてきたものだ。春になると大勢の人がそのはかない美を愛でるために訪れる。人と桜の関係を通して人と人とがつながっている。蜷川の過去の写真のコラージュによるインスタレーションでは都市と金魚とが重ね合わされる。どちらも人間の欲望によって作り変えられてきたものだ。