【医師に聞く】「大腸がん」は大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)で早期発見したら治る?
治療や検査の進歩により、がんは今や「不治の病」ではなくなりました。ですが、重要なことは定期的な検査による早期発見・早期治療です。そこで今回は、大腸がんや大腸カメラの重要性について日本消化器病学会専門医の山田 晃弘先生(横浜内科おなかクリニック院長)に伺いました。 【イラスト解説】「大腸がんになりやすい人」の特徴 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
大腸がんってどんな病気? 専門医が解説
編集部: 大腸がんについて教えてください。 山田先生: 大腸は、全長約1.5m~2m、直径約5~7cmの消化管で、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に分けられます。大腸がんは大腸に発生するがんで、特に直腸からS状結腸に60%以上ができると言われています。 編集部: 原因はありますか? 山田先生: 大腸がんのリスクとしては、年齢(50歳以上)、喫煙、飲酒、肥満、大腸がんの家族歴などが挙げられています。年齢を重ねるとともに大腸がんの発症リスクは上昇し、約90%の大腸がんは50歳以上で発症するとされています。 また、家族の病歴との関わりもあるとされており、特に家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系では、近親者に大腸がんの発生が多くみられます。 日本ではこの20年で大腸がんによる死亡数が約1.5倍と報告されていますが、食習慣の欧米化が関与していると考えられています。 編集部: そんなに増えているのですか? 山田先生: そうです。昔ながらの日本食は、低脂肪で食物繊維が多く含まれるという特徴がありましたが、昨今は食生活の欧米化により動物性脂肪の摂り過ぎや食物繊維の不足などが起こり、日本人に大腸がんが増えていると言われています。 2021年の報告によると、がん死亡者の分類で、大腸がんは女性では1位、男性でも2位となっています。
大腸カメラ(大腸内視鏡)ではどんな病気がわかる?
編集部: 大腸がんはどんな症状が出るのですか? 山田先生: 早期の大腸がんには自覚症状がほとんどありません。実際、大腸がんと診断された患者さんの約半数は、検診や人間ドックで指摘されて検査しただけで自覚症状はなかったという調査結果もあります。 編集部: 大腸がんの検診ではどんな検査をするのですか? 山田先生: まずは問診でリスク要因などを評価します。検査としては「便潜血検査」、いわゆる検便が推奨されています。便潜血検査には死亡率減少効果があることが示されております。 ただし、便潜血が陰性であれば絶対にポリープやがんが存在しないというわけではないので、一回の検査だけでなく、毎年もしくは隔年で定期的なチェックが望まれます。また、精密検査には大腸内視鏡検査が一般的です。 編集部: 大腸カメラについて教えてください。 山田先生: 大腸カメラは「下部消化管内視鏡検査」という検査で、先端に高性能カメラがついた内視鏡を肛門から入れて盲腸まで挿入し、抜きながら大腸の内部を観察する検査です。 ポリープやがんなどの腫瘍や潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を見つけることができます。 編集部: カメラで直接観察できるのですね。 山田先生: 観察だけではありません。もし切除が必要なポリープがあった場合はその場で治療できますし、がんを疑う病変があった場合は「生検」、つまりその部分の組織を採取して、がんかどうかを詳細に調べることもできます。