半世紀ぶり日本からのノーベル平和賞が突きつける、核兵器廃絶への重き矛盾
日本が抱える矛盾
しかし、手放しで喜んでばかりいられない複雑な現実がある。それは今の日本が抱える大きな矛盾である。世界で唯一の戦争被爆国の日本は、外交などの場面で世界に対して「核兵器のない世界」実現を訴えている。その一方で、国連が2017年に採択した「核兵器禁止条約(TPNW)」への署名と批准をしていない。核兵器を保有する国は、ひとつも参加せず、米国ももちろん非参加である。米国の"核の傘の下"で、ある意味"守られている"日本は、こうした禁止条約に参加できない立場にある。
オブザーバー参加も困難
同じ、第二次世界大戦の敗戦国であるドイツは、オブザーバーとして核兵器禁止条約会議へ出席しているが、日本は、義務のないオブザーバーという立ち位置ですら関われないでいる。「核兵器のなき世界」を訴えながら「核兵器禁止条約」には参加できない矛盾、被爆国ニッポンが世界に発信する平和のメッセージも、今ひとつ弱い印象は否めない。 半世紀ぶりの日本からのノーベル平和賞、その意味を今一度かみしめて、国としてこの矛盾の解消に歩み出す。原爆投下80年を前にした授賞は、そんな歩みを強く後押ししているように思う。 【東西南北論説風(530) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
CBCテレビ