<掛布雅之が語る>マー君と江川卓の共通点
23連勝の田中将大を掛布氏が解説
楽天の田中将大投手の球史を塗り替えた驚愕の連勝記録が続いている。 いったい何がマー君を勝たせているのか? [表]楽天イーグルス これまでの年間成績 原因を考えてみた。思い当たるのは、春のWBCの経験だ。V3を狙ったWBCでは、サムライジャパンのエースと言われ期待されたが、想定外の弱さを見せた。大勝負では“エースになりきれない”というメンタルの部分での弱さである。彼が、慕うダルビッシュとの違いでもある。その差は、おそらくマー君自身が一番、感じていたのだろう。彼にとっては、苦い思い出の1か月だったと思うが、そのWBCの戦いの中にも収穫はあった。
WBCでウイニングショットを発見
国際試合でも通用するボールを発見したこと。スプリットである。あのボールだけはウイニングショットとして使えた。メンタルの課題と、国際舞台でも使えるウイニングショットの確認。今、考えてみると23連勝の裏には、そのWBCの経験が生きている。 本来、スプリット、フォークという落ちるボールはバッターに依存するボールである。ストライクゾーンからボールゾーンに落として「どうか振って下さい」と、その結果をバッターのスイングに委ねるという球種である。もし見送られると、ボールが増え、カウントが悪くなる。だが、マー君のスプリットは、その依存型ボールの常識を変えた。彼のスプリットは、今までのボールとは違い、バッターに依存せずピッチャー主導のボールなのだ。ストライクからボールになるスプリットだけでなく、ストライクからストライクになるスプリットを使う。おそらくバッターとの駆け引きの中で使い分けているのだろう。配球の中で、自分が主導権を持っているボールをウイニングショットとして使えることの意味は大きい。 本来の依存型のスプリットならば、バッターは、低目への“目付け”(焦点を合わせることを私はこう呼んでいる)だけでOKだったが、ストライクになるスプリットが高目から落ちてくるとなると、バッターは、タテの大きな上下の幅の中でボールを見極めなければならない。ストライクゾーンをタテに大きく使われると、バッターの目線はぶれる。“目付け”の位置を高くすることになり、ボールゾーンに落ちていくスプリットにも手を出してしまうことになる。144、145キロのスピードを持ったスプリットが変化するのだから、なおさら厄介だ。