<掛布雅之が語る>マー君と江川卓の共通点
全盛期の江川卓氏との共通点
そのストライクゾーンの立体的な使い方は、元巨人の江川卓の全盛期に似ている。江川氏の場合は、スプリットでなくカーブだったが、高目からストンとタテに大きな落差で落としてきた。すると打者の“目付け”は少し上になる。そこに、あの江川氏独特の逆にホップしてくるストレートを投げてこられるとボールをバットの芯で捉えることは困難になる。マー君のスプリットを使ったストライクゾーンの立体的な使い方は、江川氏のそれに酷似しているのだ。 またもうひとつのマー君の特徴は、両サイドへのコントロールが優れている点だろう。球威のあるストレートを内角、外角へと投げ分けることができている。 昔、江夏豊さんに、こんな話を聞いたことがあった。 「低目に投げることは意識していればできるんだ。掛でも“低目に投げろ!”と言わればできるだろう? だが、左右に投げ分けるには技術がいる。本当のコントロールを持ったピッチャーというのは、これができる人だ」 マー君は、立体的にストライクゾーンを見せることができている。
掛布氏 vsマー君が実現したら?
もし全盛期の私が、今のマー君と対戦したら? 真っ直ぐを捨てて、そのスプリットを待つと思う。前述したようにバッターの“目付け”を上下にぶれさせるボールなので、そこに注意しながら狙う。彼のスプリットは果たして真っ直ぐのタイミングで待っていて打てるボールかどうかはわからないが、絶対に配球の中でひとつ、ふたつと投げてくるボールだ。4打席立って、1打席、1球でいい。彼のウイニングショットを仕留めると、次の打席から、また決め球が変わってくるものなのだ。 最後に余談だが、マー君の連勝記録の最大の危機は、我が阪神タイガースとの交流戦にあった。5月28日の甲子園での阪神―楽天戦。先発のマー君は、鳥谷、マートンのタイムリーで先に2点を失った。0-2のまま6回で降板したが、結局、直後の七回に楽天が逆転してマー君の負けを消したのである。 (文責・掛布雅之/構成・本郷陽一)