ドラマ史上に残る名演技も…総理大臣の社会見学『民王R』に背中を押されるワケ。 考察レビュー
遠藤憲一が主演を務めるドラマ『民王R』(テレビ朝日系)。総理大臣が全国民を対象に、心と体が入れ替わる痛快政治エンターテインメントだ。老若男女問わず入れ替わってしまう主人公・泰山とそれを支える個性的キャストが織りなす本作のレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】遠藤憲一の七変化が凄すぎる…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『民王R』劇中カット一覧
意外なほど面白い! 遠藤憲一、一世一代の挑戦
今回の入れ替わりは全国民――。極小マイクロチップのそうくるか、大風呂敷広げたなあと突っ込みたくなる「民王R」の設定。どうするのか、我らが武藤泰山、大変な挑戦だぞ、演じる遠藤憲一! しかし、意外なほど面白い。安定の包容力官房長官カリヤン(金田明夫)、愛され度がゆるキャラの域に入った書生:田中丸(大橋和也)、毒舌の秘書冴島(あの)、神出鬼没&子育て中、リモートでは宇宙の壁紙で怪しさが一層増す公安・新⤴︎田(山内圭哉)。ガラスのメンタルだが情報力は抜群の、(自称)コードネーム:キャット、猫田(山時聡真)――。 個性的な面々に支えられ、泰山は、闇バイトの青年、保育園の園児5歳、と入れ替わりをし、乗り越え、支持率を上げている。ミラクルな団体戦、第2話、第3話をさっそく振り返ってみよう。
第2話「若いんだから」「自己責任」の呪縛
第2話で入れ替わったのは、生活苦から闇バイトに手を出してしまった青年、木下直樹(曽田陵介)だ。 スマホに映る自分の顔を見て「ああ、かっこいい…」と泰山の心の声が漏れたシーンがあったが、確かに私も思った。「今回の入れ替わりの人かっこいい…」と。 特に仁王立ちが素晴らしい。どこかで見た顔だと調べてみると、やっぱり前クール好評を博したドラマ『笑うマトリョーシカ』(TBS系)の青山君ではないか! こんな大事な回に抜擢されるとは、若手ルーキーと期待していいだろう。 そんな彼の熱演と、疲れた若者特有の鬱屈を静かに表したエンケンの名演で、都内において給料15万円で暮らす大変さが描かれる。 予告の時点ではてっきり闇バイトのヤバい内情がメインになると思っていたが、ふたを開ければ「真面目な若者がそこに陥るプロセス」が丁寧に描かれていた。 親とも疎遠、相談できる友達もいない。給料は上がらない。なのに、 「しゃきっとしてくれよ、若者なんだから」 「若者の孤立やなんやって…そんなの自分で努力してもらわないと」 という言葉が容赦なくのしかかる。 若いから、体力があるから、自分たちでなんとかできるだろう――。現代社会、若者とシニアの間に流れる深く広い溝、それはこの「自己責任」の溝だ。 いくら若くても悩みはある。が、これを言われちゃもう何も言えない、SOSを言おうにもグッとつまる。そして諦める。木下は、泰山の顔で力なく言うのだ。 「若者の孤立、貧困、そういうの、自己責任ですもんね」