人生100年時代、年齢問わず自律的に働く「プラチナキャリア」に注目 専門性向上、希望に応じた柔軟な異動。企業も人材確保にメリット
健康寿命が延び、働く期間が長くなった。男性が外で仕事を担い、女性が家事や育児に専念する固定的な役割分担も変わりつつある。そんな中、老若男女問わず、自律的に心地よい働き方を選択し続ける「プラチナキャリア」という考え方が注目されている。企業には、従業員が専門性を身につけてスキルを磨くことを支援し、希望をかなえるための異動に柔軟に対応することが期待される。女性活躍の環境を整え、経営陣と現場の双方向のコミュニケーションを円滑にすることもポイントだ。企業側は従業員の希望に応えることで人材確保につなげようと、取り組みが広がっている。(共同通信=徳光まり) 【写真】民間から飛び込んだ省庁「DX人材」の本音 やりがい、困難、次のキャリア
▽地方銀行がコンサルの専門人材育成 金属のプラチナは安定した材質で耐久性が高い。「プラチナキャリア」は持続的に輝いて働くイメージを重ねて命名された。考え方を提唱した三菱UFJ信託銀行と三菱総合研究所は2019年から、取り組みに優れた企業に毎年「プラチナキャリア・アワード」を授与している。厚生労働省は当初から、東京証券取引所は2020年から後援についている。企業側としても優秀な人材をつなぎとめることができれば「人材重視の経営を実践している」と投資家から高い評価が得られるため、関心が高まっている。 2024年7月末、東京証券取引所内のホールでプラチナキャリア・アワードの表彰式が開かれた。今年で6回目の開催で、初めて地方銀行が受賞した。松江市に本店を置く山陰合同銀行だ。地方銀行のキャリアはかつて画一的な傾向だった。地元の優秀な人材が終身雇用を想定して入行し、同期でそろって支店で働き始め、総合職の男性を中心に支店長を目指して営業成績を競うのが一般的だった。
だが、山陰合同銀行が評価されたポイントは「地域密着型で多様な未来(につながる)人材を育成した」ことだ。とりわけ地場企業の経営課題に親身に向き合うコンサルティング業務の専門人材が光った。地方銀行で定着した横並びのキャリア形成ではなく、多様な人材を輩出する試みが認められた。 ▽顧客の悩みに深く関わる醍醐味 山陰合同銀行で高度な知見を持つ「ハイクラスコンサル人材」として活躍する吉川昌則さん(38)は「日常的に付き合いがある中小企業に安心して相談してもらえる」とやりがいを語る。鳥取県内の運送業者から新たに倉庫業を始める相談を持ちかけられたときは、既存事業との相乗効果を検証し、資金調達を実現させた。東京のコンサル会社での研修も経て、融資にとどまらず顧客の悩みに深く関わる醍醐味を感じる日々。「経営に伴走するうちに自分も経営したくなり、銀行として新事業を将来やってみたい」という。専門性を身に付け、キャリアの選択肢が広がった1人だ。