2大メガバンクがトヨタ株売却へ…?日本株「持ち合い」終焉のウラで動き出す“黒船”
2大メガバンクがトヨタ株売却へ…?
少し前、6月7日に流れたニュースになるが、三菱UFJフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループ、我が国の2大メガバンクが政策保有株の見直しの中で、トヨタ自動車株の売却を検討しているという観測報道があった。もしその話が実現すれば、時価ベースで総額1兆3,200億円に達する巨額の売却になる。 【マンガ】「長者番付1位」になった「会社員」の「スゴすぎる投資術」の全容 また、対象となる銘柄がトヨタ自動車ということで、それは我が国の「事業会社相互の株式持ち合い構造」そのものの終焉を告げる象徴的な事案として、多くの経済人に受け止められたのではないだろうか。もちろん、持ち合い構造の終焉という言葉は既に10年スパンで語られていたものだが、ああ、とうとうここに来たのか、本当に時代は変わるのだな、という感想を少なくとも私は抱いた。 残念ながら(? )その後、具体的な話は出てきていないし、関係する3社からの正式のリリースもされていないが、火のないところに煙はない、というまさにそんな話で、おそらくは水面下、そうした方向に向けての地ならしなり、交渉なりが続いているのではないかと推察する。 実際、トヨタ自動車について言えば、昨年の冬から系列各社の相互持合いが見直され、デンソー株など実際に政策保有株売却の動きが始まっているし、保ち合い構造の本丸に位置するメインバンク自体が、例えば三井住友フィナンシャルであれば、図1に示すように2026年度から2028年度に亘る次期中計期間中に、連結純資産に対する政策保有株の時価残高が20%未満になるよう政策保有株の見直しと売却を進めることを発表している。三菱フィナンシャルもまた同様に政策保有株の見直しを進めているし、損保や生保各社もメガバンク以上に思い切った方針を示し始めているのは、様々な報道や経済記事が指し示す通りだ。 こうした動きの背景にあるものを一つ挙げるとすれば、それは、東証のPBR1倍割れ是正要請であり、各社が取り組んでいるのが、分母にあたる自己資本の適正化・軽量化であることは論を待たないだろう。そして、繰り返すが、日本株式会社を名実ともに代表・象徴するトヨタ自動車株を、三菱UFJと三井住友という2大メガバンクが政策保有株としては手放そうとしている、これはまさに何か根本的なものが変わる、その象徴に思える。 では、何が変わろうとしているのか。その問題を考えるには、改めて「株式持ち合いとは何だったのか」「それはいつ始まり、何を日本企業にもたらたしてきたのか」について知らなければならない。正確で詳細な論考はこの記事のテーマではないが、そのためには戦後GHQによって行われた財閥解体や証券民主化運動の過去に遡らなければならない。